今までの非礼を謝るだと?もう遅い。俺たちは真の仲間と共に冒険を続けます。
「うえええん…そんだごどいばないでぐだざいましい!私たちだのしぐやってきだではありませんの!!」
「お前だけ、な。楽しくやってたのは、お前、だけだ。もうお前の罵詈雑言…我儘にはうんざりなんだよ!!」
「謝るがらぁ…ごめんなさいぃ…。もう、悪口言ったり、我儘言わないからぁ…いい子にするからぁ…仲間外れにしないでぐださいまぜえ!!」
俺たちの前で泣きじゃくるこの美人こそが、シャトラ。外道だ。俺たちはたしかに、5人で楽しくやっていたし、チームワークも良く、ギルドからも高い評価を得ているクラン、だった。あの日までは。だから、ギルドで、ギルドの人間立ち合いの下、追放を言い渡した。
「…ふんっ!あんたなんか…あんたなんか…ゴミなんだから。一人でどっか行きなさいよ!」
懇願するシャトラに、はっきりと拒絶をしたのはメイだ。メイは口は悪いが、これでも仲間思いだ。シャトラをクランから追放させるのに、最後まで反対したのはこいつだった。
「最近のお前は、正直どうかしてる。お前とは、もうクランをやっていける気がしない…すまん」
ゴードン、このクランの大黒柱。俺たちの実力を1番理解してくれている兄貴分だ。その兄貴分が、シャトラという戦力を失うよりも、シャトラが原因で被る損害の方が大きいと判断した。だからというわけではないが、やはり、シャトラとはもうやっていけない。
「ざまみろ…耳長クソエルフ…あばよ」
ドワーフの少女ハル。口数が少なく、弱気で、体も小さい。だから、いつもシャトラのターゲットになっていた。シャトラの追放を提案したのは、ハルだった。
「ハルぅごめんなざいごめんなざいいい!!」
「なんの騒ぎだ、あんたら?」
そこに現れたのは、人間の男と子供2人だった。
「なるほどな。このシャトラってガキが、あんたらのクランの空気を乱してたから、追放するって話か…。まあ、組織に身を置く以上、筋を通さねえなら、追放されるのが道理だと俺も思うぜ」
「ああ、そうだ。俺は幾度となく忠告したが、それでもシャトラは態度を改めなかった。今更ガキみたいに泣きじゃくって謝ったところで、もう遅い」
人間は中立的な目で、ただ筋を通していないのはどちらかだけを判定した。だからか、俺たちが考えていなかった意見を出した。
「まあ…さっきのやりとりを少し見てたが、あんたらも本気で追放したいってわけじゃないんだろ。だったら、チャンスをくれてやってもいいじゃねえか」
ハルが勢いよく首を横に振った。余程嫌らしい。俺もその気持ちが痛いほどわかる。なぜ今更チャンスなどやらなければいけないのか。
「ハッ…、会ったばかりの人間風情に言われることじゃないわ!どんなチャンスをあげろっていうの?」
「そうだな………クロエ。何かいい案はあるか?」
クロエと呼ばれた少女が、こちらを、正確には、ハルの顔を見た。
「そう、ですね。耳長クソエルフの問題は…、罵倒、我儘、自慢だ、です。とりあえず…、このクソエルフだけ一からやり直させたらどうだ、ですか?ギルドの冒険者の下っ端、下積みからやり直させて、初心に帰らせる、です。称号なんかを剥奪して」
「ちょっと待ってくださる!?私がここまで来るのに、どれほどの時間を費やしたと思いますの!名誉弓兵賞は手放しませんわ!!」
これで決まりだ。こいつも、もうやり直ししようなんて思っていないのだ。ただ、都合の良いいじめ相手が欲しいだけ。昔のやつではないのだ。
「お姉さん。とにかく、やり直そうよ。仲間外れは、辛いよ?」
「そうだ、です。リン。きっと、皆後で辛くなるだけだ、です。元通りになれるなら、そのほうがいい、と思う、です」
人間の子供2人に諭され、流石にやり直すことに決めたのか、シャトラは大人しくなり、俺たちに改めて謝罪してきた。今までで一番誠意を感じる、見事な謝罪だった。俺たちも、昔のやつに戻って欲しい、そう思ってはいるのだ。俺たちは、人間のやり直しの提案に乗ることにした。
「じゃあ、クソエルフ。この森の案内を、頼む、ですよ。高級ホテルのボーイみたいに、です」
「どうして私がそんなことを…、あ。お引き受けいたしますわよ。もちろん!!」
流行りに乗っかるスタイル。




