エルフの森に行こう
「結局…レイは見つからなかった…。人を立ってられないほど衰弱させるヤツを倒して、誰かに連れてかれたことはわかったが…」
風間はレイを探すため、街を必死に奔走した。しかし、彼女は見つからず、得られたのは誰かに連れて行かれたという手がかりだけだった。途方に暮れる風間は、当てもなく重い足を引き摺るようにして歩き続ける。そんな風間に声をかける者がいた。
「ソウイチ。らしくない、です」
「そうだよ。おじさんに考える姿は似合わないよ。悩むくらいだったら、とにかく行くよ。皇帝さんが部屋で待ってる」
声をかけたのはクロエと凛だ。無意識のうちに、皆でとっていた宿の前まで来ていた風間を見かけたから、2人はここにいる。二人からの鞭を受けて、風間は考えるのをやめた。
「ああ…そうだな。よし、どうして皇帝が部屋にいるのかはわからねえが、待たせるわけにはいかねえな」
先程までとは打って変わって、軽い足取りで3人は部屋に向かった。
扉を開けると、そこには、確かに皇帝がいた。威風堂々たる姿はまさに皇帝と言う他ない。しかし、帝国杯で見た皇帝とどこか似てはいるものの、顔も身長も違う。さらに、特に目を引くものがあった。
「…やあ。ハロハロー。カザマ、災難だったね。こんなことになるとは…ね」
「あんたは…帝国杯でみたやつとはどうも別人に見えるんだが…その耳、あの皇帝とは違って、あんたは明らかにエルフだろ。誰だ?」
「この私を知らない人がいるなんてね。まあ、いいさ。私はピュイサンス・エルクレス。先代の皇帝だよ」
その男は先代の皇帝だった。壮一と凛は予想外のことに驚き、クロエは平然としている。ここで、3人が疑問に思ったのは、なぜ先代がここにいるか、である。
「私はね、カザマたちにアドバイスしに来たんだ。帝国杯優勝の報酬にね。君たち、私の母の故郷、豊穣の森に行くんだ。そこに行けば、きっと進むべき道は見つかる。それじゃ、時間も来たし、帰るから」
先代は壮一たちに、助言に来たと言う。気になることはいくつもあったが、まず、聞かなければいけないことがあった。
「あんたのその助言とやら、信用できるのか?」
当然の疑問であった。突如現れた先代、そして根拠のない助言。疑ってかかるのも無理はない。しかし、先代は表情ひとつ変えずに話し始めた。
「クロエ、貴方ならわかるはずだ。私が真実を話しているということが。それに、豊穣の森には、最先端の医療がある。レイを治すことも、できるだろうね」
壮一がクロエに目を向けると、「本当です」と言った。クロエが本当であると言う以上、真実でないはずがない。
「そうか…。最後に、これだけ聞いときたい。俺が優勝ってのはどう言うことだ?」
俯いて、心から残念そうに先代はボソッと口を開いた。
「あなた以外、準決勝、決勝に出るはずの人が消えちゃいましたから」
「なに?じゃあ、黒田も消えたのか?」
「そういうことです。ついでに、あの聖女、ヒマリィも消えたそうです…。それでは」
衝撃的な事実を話して、先代は去っていった。壮一は悩むことをやめたはずが、再び考え込んでしまった。
「どういうことだ…、俺以外消えたってのは。わからねえ。とにかく、豊穣の森、行くしかねえのか…」
「よし、行こう。豊穣の森で、何か見つけるんだ。レイさんのために」
「そう、です…。ところで、クロォイも見当たらない、です。意味わかんねえ、ですよ」
「全く、だれもいねえじゃねえか。どうなってんだ」
エルフの森に行きます。えいえいおーでございますわよ。




