悪意の治療
「…どこだ、ここは」
「…エルクレス城の一室だそうです、風間さん。2日ぶりの日の光はどうですか」
「海部サンか…。あんたも巻き込まれてたのか。まあ、最悪の気分だよ」
エルクレス城の一室、そこに2人はベッドに寝かされていた。全身に包帯を巻かれ、ミイラのような風間と、この上なく青白い顔色の海部は、口以外を動かさずに話し始めた。
「俺が気絶している間に、何が起こったんだ?」
「まず、帝国杯にジャッククルーニーという能力者と彼のクスリで作られた巨人が乱入しました。この2人を私と千鶴の2人で倒し、今ジャックは警察の取調べを受けています」
「黒田はどこに?」
「千鶴は、行方不明のレイさんを探しています」
それを聞いた風間が無理に体を動かしてベッドから落下し、悶絶する。動けなくなった代わりに、口を開いた。
「レイは、無事なのかッ」
「わかりません。でも、皇帝もレイさんの捜索に手を貸してくれてますから、そのうち見つかるでしょう」
海部の言葉を聴いてなお風間は、安心できていなかった。皇帝の助力があってなお、2日も行方不明であるということは、最悪の可能性が十分に考えられたからだ。
「海部さん…、頼む。あんたの能力で治してくれ」
「いいですよ。…はい、治しました。もう動けます」
「…おお。感謝する」
海部が瞬きする間に、風間の体は先ほどまでの重傷が嘘だったかのように動けるようになっていた。体中に巻かれた包帯をむしり取り、腹筋を露にする風間が、海部の視界に映る。
「ちょ、ちょっと!風間さん!?服、服!」
「すまん…よし。じゃあ、行ってくる」
服を着た風間は脱兎の如く、部屋を抜け出していき、そこには、海部1人が取り残された。彼女の青白い顔に、窓から光が差す。
「ああ…、眩しい。風間さんに、カーテン閉めてもらえばよかった」




