ケジメの請求先はどなた様に?
「ミス、クロォダ…。久しぶりだなあ?こっちでもめちゃくちゃやりやがってよお…井の中の蛙風情が、太平洋じゃ通用しないってのは、もちろん知ってるんだよなあ?」
「やっぱりあんたっすか…、ジャック・クルーニー!死んで詫びろと言ったはずっすよね?ケジメは、自分でつけるべきだと、そうも言ったっすよね?筋を通さないあんたら麻薬カルテルの根性は、ドブよりも汚らわしいっす」
両者が互いに向ける目には、明らかに憤怒が滲んでいた。それも、親でも殺されたような程の。
「筋だかなんだかはジャポンマフィアの文化だろう。まあ、あのクソ狭い島国なんかで威張ってるようじゃそんなことも知らなかったんだろうから教えといてやる。約束は守る、それが俺たち大陸マフィアの唯一絶対のルールだ」
「…黒田家を、あんたら反社どもと同類みたいに思われるのは不快極まるっすね。金のためにクソに手ぇ突っ込むことすら厭わないまさにクソマフィアどもとは」
「『凍り、彼の者を貫きたまえ』!!!クロォォォォォダァァァァァイ!!」
ジャックが手を正面にかざすと、いくつもの氷柱がそこにあらわれ、黒田に向かって殺到する。黒田はこれを容易く避けるが、脅威はこれだけではない。避けた先に巨人の足が踏み荒らされようとしていた。
「フミツブシでヤル」
「くっ、やりづらい!巨人に氷柱、なんでもありかっ。魔法っていうのは拳銃なんかよりタチが悪すぎる…っ」
魔力が続く限り、魔法にはよるが短時間で発動される上、リロードさえ必要とせず、発動し続けられるもの。さらに、魔法が関わっているであろう何かで作られた巨人が、黒田を防戦一方に追い込んでいく。
「千鶴ちゃん!助太刀します!」
彼女は、声が聞こえたので崩壊した観客席の方を見ると、そこにはレイがいた。しかし、彼女は、自身のトラウマのせいで、正しい判断を強いられた。
「レイさんは!力を温存しといてくださいっす!こいつは、絶対に、何か残してるっす!消耗した状態では、そいつを何とかできないっすよ!」
「ご明察…と言いたいところだが、どうだかねえ?そこのあんた、助けに入ってやったほうがいいんじゃないか?」
「…なるほど、ええ、ええ。任せましたよ、千鶴ちゃん!」
ジャックの様子を見て、レイは千鶴の判断に従うことにした。隠しきれない獰猛さと、外道に踏み入れた人間独特の雰囲気、それらを感じ取ったのだ。
レイがどこかに走り去ったのを確認して、起死回生の一手を考え始める黒田。脱落した対戦相手の剣を拾い、会場に彼女の能力を使うしかない、そう考えた、が。
「どうした!前とは全く逆だなあッ、ミスクロダ!」
巨人と、ジャックの猛攻がそれを許さない。黒田は風間が目覚めてくれれば、そう祈った。




