八話
壮一とアナがドラゴンに乗った頃、凛とルーシーは街の人たちの避難を終わらせていた。今は取り残された人が居ないかを確認しているところだ。
「もう人はいないと思うけど…」
ルーシーはそう言ってサーチー辺りの指定したものを探す魔法ーで人を探す。すると、一つの家から反応があった。
「…不幸中の幸いね、見つけられてよかったわ」
「うん、早く行って避難させようね」
二人はゲートにより取り残された人がいる部屋へと飛んだ。しかし、そこで二人が見たのは意外な光景だった。こちらに背を向けた男が水晶に手をかざし、何かをしていた。その水晶にはドラゴンの姿があった。
「魔力を出すのをやめなさい、あなたがこの事態を引き起こしていたのね」
そう、この男は魔物使いであり、ドラゴンを操って街を襲わせようとしていたのだった。
「フハハハッ!その通りです!まさかたった二人にあのドラゴンたちの足止めだけでなく、ここまで数を減らされるとは思いませんでしたよ!」
男はあっさりと自白した。
「いや、あなたがたも私にとって計算違いですけどね。ハッ…、よくも避難させやがったな!」
男は懐からナイフを取り出し、ルーシーを刺そうとした。しかし、彼女はこれを予想していたらしく、魔法によって檻のような物を作り出し、男を捕らえてしまった。
「これは私の傑作、アビスよ…、あなたは自分でそこから出ることはできず、魔法を発動することさえできない。…、まあ、聞こえてないでしょうけど」
水晶に映るドラゴンたちは大人しくなっており、どこかへと去っていた。
一方その頃、壮一たちは地面へ降りていた。ドラゴンが去っていくのを確認したからだ。そして、二人のそばにはなにやら涙目になった哀愁漂う二頭のドラゴンがいた。もはや完全に二人に屈服したようだ。
「しかし、助かった。あのまま続いていたらまずかったかもしれん」
「何を言っておる。おぬし、まだまだ余裕であったであろう?」
「フッ…。それはあんたもだろう?」
二人は目を合わせて、お互いを賞賛する。そこには共に戦った仲間への敬意があった。
「じゃが、なぜいきなり奴らは去って行ったのかのう…」
それは壮一も気になっていた。また一波乱あるのではないかと内心では構えていた。
「おじさーん!アナさーん!」
そこへ凛とルーシーが走ってくる。後ろには街の人々がいた。
「やっぱり心配するまでも無かったかしら?姉さんたち」
「良かった…、心配したんだからね!」
凛とルーシーは二人のことを心配していた。無事を確認した二人は安堵した顔を見せる。
そこへ1人の男がやって来た。
「この度は街を未曾有の危機から救っていただき感謝します。私はこの街の領主、アルト・トパーズと申します。主犯の男を捕らえていただいたことも含め、私の館で感謝の宴を開こうと思います。ですので、私の館にいらしていただけないでしょうか?」
「うむ、ぜひ行かせてもらう。じゃが、主犯とはどういうことじゃ?」
そこでルーシーが口を開いた。
「そのことなんだけどね、姉さん。魔物使いがあのドラゴンたちを操っていたのよ、その魔物使いは今、領主の館で閉じ込めてあるわ」
「なんと、そうじゃったか…」
ーさて、こんなことをしでかした不届き者に理由を聞きにいくかの…