表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界子守道中  作者: トライド
第三部 エルクレス帝国 帝国杯
88/122

乱闘試合〜レイの場合〜

「なんで私のこと皆無視するんですか〜!?もう、もういいです…」


「うおおお!お前らやるじゃねえかっ、俺の本気の一撃受けてみやがれ!」


「ふっそんなもの効きはしない。僕のようにもっとエレガントにだね…」


「やっぱり、王道を征く、暗殺ですかね」


「ある意味では王道だけども、どの王も通る道というかなんというか」


 その乱闘試合は異様な様相を呈していた。1人の出場者が他の4人に完全に無視されているという、帝国杯始まっての珍事であった。


 蚊帳の外にされている張本人は、隅に座って地面に延々と0の字を描き続けている。その人こそ、レイである。彼女がこのような目に遭っているのには、ちゃんとした理由が存在する。乱闘試合が始まる前、ある噂が他4人の耳に入っていた。


 曰く、対戦相手を天ぷらにした。


 曰く、皇帝付きの治療魔術師でさえ、治療に1時間かかるほどの傷を負わせた。


 曰く、悪徳外道敏腕弁護士がついており、彼の前では、彼女の犯した全ての黒が白になる。


 曰く、一子相伝のメイド拳を継承しており、残虐無比な技をいくつも持っている。


 曰く、その女の名前は、レイである。


 どんな噂にも尾鰭がつくものだ。しかし、逆に言えば、そこには必ず、真実が存在している、してしまっている。4人は、冒険者としての長年の経験により、それを痛いほどわかっていたのだ。だからこそ、4人は最初からレイに触れないことにした。触らぬ神に祟りなし、ということである。


 つまり、この乱闘試合では、いかにして自身の格を落とさずに脱落し、レイと戦う役目を押し付けるか、という競技が始まっていた。そんな様子を観ている観客が1人、また1人とチキンレースに気づく。気づいた観客たちは、もちろん黙っていない。ブーイングが酷くなっていき、徐々に収拾がつかなくなっていく。


「者ども、()()()


 そこに、威風堂々たる男が現れた。その号令で一部を除き全ての観客が、たちまち口を閉じる。この男こそ、エルクレス帝国、皇帝。


「余はエルクレス、皇帝である。ここで、特例的にルール変更を行う。異国の…メイドを名乗るレイよ、お主はフライパンのみをもって4人を打倒せよ。4人は、協力してレイを打倒せよ」


 皇帝直々のルール変更があった以上、それを聞かないわけにはいかない。4人は、嫌々ながらもレイを取り囲む。


「異議ありいいい!!!フライパンだけで4人を!?で、できませんよ!」

「異議を却下します」

 レイは異議を唱えていたが、ここは法廷ではない。認められるはずもなく、どこからか現れた裁判長が却下する。しかし、異議を唱えたその次には、彼女は全身に闘気を、魔力を漲らせた。

 目が据わった。

 いや、それ以上に雰囲気が違う。先程までの彼女ではない。

「暗殺…スニーキングキル…狙ってましダハァ!!!」

 存在感を消し、誰の目にも映らぬ暗殺者をフライパンが捕らえた。


「剣聖の領域…初代剣聖が精神修行の果てにたどりついた、全ての隠蔽、幻惑を見破り、何もかもを見通し、ただ実相を断ち切るという…」


 レイは腕を脱力させ、フライパンを垂らすように構えていた。しかし、それでいてフライパンは彼女の手にしっかりと握られている。

 一見、隙だらけに見えるこの構えは、3人にどこから、どのように攻撃しても、カウンターにより倒れる自分を幻視させた。


 事実、そうであった。

 レイ、乱闘試合勝利。準決勝に進む。




今日も一日頑張りましょう

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ