表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界子守道中  作者: トライド
第三部 エルクレス帝国 帝国杯
81/122

2

 黒田千鶴は、転移者である。つまり、ここ、異世界に来る前、別の場所において生活していた。日本の首都、東京、そこが彼女のかつての生活の起居としていた家の建てられた場所だった。異世界とは異なる理によって運営され、異なる歴史を紡いでいた世界だが、かといって異世界と全く似通うところのないと言うわけでもなく、そこでも諍いは起こる。それは誰にとっても同様で、彼女もその例外ではなかった。若くして、12歳にして、彼女は黒田家の当主となり、それに相応しい実力も兼ね備えていた。

 つまり、高速移動程度に屈するような人間ではなかった。杖の一振りが空間を薙ぎ、二度目にして神速という偉業に真っ向から立ち向かい、これを撃退する。

「千鶴は!黒田家13代目当主、黒田千鶴っす!!いざ、尋常に勝負!!!」

 その二度の打ち合いでもって、勝負は決したかに見えた。バスターの只人の手に届かぬ奥義は、技術で、清廉なる闘気で、打ち破られたのだ。が、この打ち合いはまた、両人の闘気を目に見えるほどに猛々しくさせたようにも見えた。

 彼にとって、速さこそが強さであった。例えば、オーガのように刃を通さぬ頑強な身体の男であっても、瞬きのうちに千度の突きでもって貫ける。速さとは、全てを覆す、戦闘において最も重要な要素である、そう考えていた。もちろん、その考えこそは相違ない。ただし、技術と速さでもって、最速を打ち破ることは可能である、そう理解し、それがバスターの戦意を盛り上がらせた。

「はっ…いいぜ、やってやるよ!見せられるものなら、見せてくれ!星すら落とす人の技をな!」

 一瞬の視界に、幾千もの斬撃が映る。これを黒田は最小限の動きと、杖を投げることで突き進み、そして、バスターの喉元に手刀を突きつけた。

 バスターはこの手刀に当たるような男ではなかった。そうでなければ、神速などと謳われることはない。しかし、今この場においては、その速さは必ずしも有用であるわけではなかった。

 避けた先で杖が脳天に当たり、世界が歪む。

 今度こそ、不可避の殴打でもって意識を刈り取られるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ