君の縄張り
「なんだぁお前よぉ?ここは俺のシマだぜ!通行料払いなお嬢チャン!」
1人飛び出して行った黒田は、いつのまにかスラム街に辿り着いていた。それに気付かせてくれたのが、このシマを主張する大男である。
「通行料もなにもここがお兄さんのシマだって証拠はあるんすか?」
ことを荒立てるつもりはないが、絡まれるのは鬱陶しい。なんとか言いくるめたいと思っていた。
「…お、お兄さん…?俺が?」
お兄さんという言葉に強く反応し尋ねる大男、黒田はもしや、と思い繰り返した。
「お兄さん、この街に来たのは初めてで、よくわからないんすよ。帝国杯に出たいんすけど、どこにいけばいいんすか?」
そう言って自らの杖を構える黒田に大男は陥落した。
「おうおうおじさん老け顔って言われるし、こんな形だからお兄さんなんて言われないからなア!嬉しいなあ!帝国杯に出たいのか?案内してやるぜ!!」
こうして、黒田はタダで案内役を手に入れたのだった。
「にしてもお嬢ちゃん、その杖、よく見てみりゃいい出来じゃねえか。どっかの高名な使い手さんだったりすんのか?」
「違うっすよ、これもらいもんっすから」
意外と気の合う2人、会話が途切れぬまま、帝国杯の舞台であり、受付もある皇帝コロシアムにたどり着く。
「よしここだ、あの無駄になげえテーブルにいる奴らに話しかけりゃすぐに受付終わらせられるはずだぜ。じゃあな。…ああ、そうだ、おじさんはジェー。何かあったら言ってくれ、手を貸すぜ!」
「あじゃじゃしたー、ジェーの兄さん」
ジェーと別れて、受付に話しかけると、トントン拍子で話が進んだ。黒田がしたことと言えば、自分の名前と武器を書類に書き込んだことくらいだ。出場者用のバッジをもらい、コロシアムを出る。
「おいガキ、お前みてえな奴が帝国杯に出んのか?やめとけやめとけ、どうせ俺に勝てんのだからな!」
するといきなり殴りつけてきた。黒田は軽々と避けて、杖で喉をついた。
「まぐれだまぐれ!お前らやるぞ!」
「ずんまぜん…色々あってイライラしてて、有り金全部渡すんで許してくだせえ…」
男たちは全身に打撲痕をつけられ、もはやどこが痛いのかもわからない。見逃して欲しかった。
「ちょうどはぐれてお金なかったんで助かったっす。ところでイライラしてたって何があったんすか?」
見逃してもらえそうだと安心した男は、愚痴まじりに話し始めた。
男によれば、男たちはあるマフィア組織に所属している人間で、"クサ"を守らされていたという。頻繁に移動させられる上、休みもロクにない。その上、先日敵対する組織に襲撃され奪われてしまい、彼らのボスに"教育"された、という話だった。
「そんな仕事してたら、それくらい覚悟しとくべきなんじゃないっすか?」
「…そうです。返す言葉もねえです」




