黒田、懐かれる
「風間サン、このちみっこは誰っすか…?」
疲れ果てた様子で部屋の中で倒れ、訪れた風間に尋ねる黒田、彼女をここまでしたのはクロエだった。
「クロエだ。旅の途中で仲間になったんだ。なんというか…変なところのある奴なんだが…、迷惑をかけたようだな」
「壮一!こいつすごい、です。不快な感情を一切持ってないし、悪巧みもしてない、です!頭ピンク、です!」
「はーー!?ピンクってなんすか!?」
黒田は流石に堪忍袋の緒が切れたようで、疲労を感じさせない怒りを見せた。ピンクが余程かんに障ったという風だ。
普段おとなしいクロエの騒ぐ姿を見て、黒田の方はともかくクロエにとってはいい出会いだったのかもしれないと風間は思う。しばらくの間、眺めていたが、黒田の部屋に来た目的を思い出す。
「アナから伝言だ、7日後にエルクレス帝国で始まる『帝国最強は誰だ!アルティメットビート杯』に出るのじゃ、だと」
「なんすか、その、あまり企画経験したことがない人が頑張って考えた、みたいな名前は」
風間は自身もそのように思ったが、見知らぬ企画者に対する努力賞として触れないことにする。
「ともかく、その帝国杯で優勝すると、皇帝が望みを叶えてくれるらしい、皇帝はエルフという長命の種族で、その中でも特に長生きだってことだから、あんたは…」
「過去に起きた異世界転移、その人たちは帰れたのかどうか教えてもらえってことすか」
風間はうなずいて返す。しかし、黒田は疑問に思った。
「風間サンは出ないんすか?なかなか強いっすよね?」
「もちろん出る。決勝で会おう…、正直黒田とは一度、正気のあんたと本気で戦ってみたかったんだ。あんたを一目見たときから、騒ぐんだよ…、俺の中の獣が」
先ほどまでとは打って変わって剣呑な空気がその場を支配する。黒田も同じことを考えていたようだ。しかし、その空気は簡単に変えられる。
「む…なんなん、ですか。この感じ、ただのピンクと脳筋じゃない…ですか?」
「ピンクじゃないすよ!」
「俺は否定できないかもな…」




