急襲と予感
光に包まれた2人が目を開けると、そこはどこまでも白い空間だった。しかし、瀬野の姿はどこにも見当たらず、得体の知れない空間に閉じ込められ、瀬野の術中に完全に嵌ってしまったのではないか、そう考えさせられる。
「ッ黒田ァ!!」
殺気を感じた壮一が黒田を押し飛ばすと、爆発が起き、壮一はそれをモロにくらってしまう。
「これで死なないってとことん化物だな。魔法はロクに使えねえみたいだが…、魔力を全部身体強化に回してるのか…。俺でもそこまではできねえよ」
瀬野がその場に姿を現す。壮一の頑丈さは彼の興味を引くらしい。
「ッッ、黒田…、油断も隙もねえ奴だな…。もういい、まとめて死ね」
黒田の剣が瀬野に触れる寸前に、瀬野の姿が再び消え、それと同時に風間と黒田は違和感を感じる。
そこで風間は首を両手で掴んで固定し、黒田は全身を時計回りに回転させた。
「嘘だろ、お前ら!?」
その違和感の正体、それは2人の視界が少しズレたこと。そのズレは瀬野によって作られたものだった。
「なるほど…、あの首が折られた死体…、あれはこれで作られてたってことか」
瀬野は2人の首の周りに突風を吹かせ、首を捻ろうとしたのだ。生半可な者に対しては、不可視の必殺となるのは間違いない。
「チッ…。俺じゃお前らには…。まあいい、」
その言葉が聞こえると、白い空間にヒビのようなものが入り、いつの間にか瀬野とともに消え去り、2人は元の場所に戻っていた。
「逃げられたか…。あれ、陽葵っちいないっす。どこ行ったんすかね?」
「わからねえ…海部さんがヤツにやられたとも思えねえ。ただ…」
「ただ?」
言いづらそうにして、一度顔を背け、黒田に目を向ける。
「あの男…瀬野が気になることを言っていた。もちろん、海部さんが外道だとかは微塵も思ってねえ。だが、何か隠してんのは確か、そう思っちまうんだ…」
「…いやー、風間さんすごいっすね。たしかに、千鶴も何か隠してる子だな〜て元の世界から思ってたっす。でも陽葵っちはいい人っす、それは確かっすから、また現れたら聞いてみるっすよ!」
「そうしよう。ああ、黒田は今からどうする?俺はアレンと合流しようと思うが…」
「千鶴も行くっす。どうせ何もすることないっすからね」
風間たちが勇者を打倒した頃、教会のある広間では激戦が繰り広げられ、煌びやかな装飾のなされたそこは、血と肉で汚されていた。
「流石にキツいですね…。もう風間さんたちも最上階に到達する頃だと思います。チェアマン、ここは撤退するべきでは?」
カルクとチェアマンを取り囲む、50人は超えているであろう騎士たちを見ながらカルクは言う。彼らは陽動のために戦い続け、もはや体力の限界だった。しかし、チェアマンは行動で答えた。
「くっ…、あなたの協力なしじゃ超えられない!頼む!」
「わかってるぜ、だから、だ!」
チェアマンは懐からリールのようなものがついたナイフを取り出し、天井に向かって投げつける。天井に当たる直前にカルクを抱き寄せると、2人の体が宙に引っ張られていく。
「ギャ…ッ!」
「ん?グハッッッ!!」
宙に投げ出された後、チェアマンは何かに気づき、自分が上になるようにした。そのまま、天井に激突し、チェアマンは激痛を伴いながらも、そこを破壊して上の階に出た。
「こんな無茶な移動するなら教えてください!」
「教えても了解してくれないと思ったからな」
その場で口喧嘩が勃発しそうになるが、カルクは言葉を飲み込み、歩き出し、あることに気付く。
「ここは…どこだ、覚えがない。こんな部屋…」
教会の関係者であるはずのカルクが知らない部屋。それがあることでカルクは警戒して、辺りを見回す。
「あの鏡…なんか歪んでねえか?」
「まさか!」
カルクが異常と気配に気づき、上を見ると、そこには黒い翼の生えた女がいた。
瀬野のキャラ作りがんばったので、そこだけは評価してほしいです




