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異世界子守道中  作者: トライド
第二部 神国ジンパク
73/122

急襲と予感

 光に包まれた2人が目を開けると、そこはどこまでも白い空間だった。しかし、瀬野の姿はどこにも見当たらず、得体の知れない空間に閉じ込められ、瀬野の術中に完全に嵌ってしまったのではないか、そう考えさせられる。

「ッ黒田ァ!!」

 殺気を感じた壮一が黒田を押し飛ばすと、爆発が起き、壮一はそれをモロにくらってしまう。

「これで死なないってとことん化物だな。魔法はロクに使えねえみたいだが…、魔力を全部身体強化に回してるのか…。俺でもそこまではできねえよ」

 瀬野がその場に姿を現す。壮一の頑丈さは彼の興味を引くらしい。

「ッッ、黒田…、油断も隙もねえ奴だな…。もういい、まとめて死ね」

 黒田の剣が瀬野に触れる寸前に、瀬野の姿が再び消え、それと同時に風間と黒田は違和感を感じる。

 そこで風間は首を両手で掴んで固定し、黒田は全身を時計回りに回転させた。

「嘘だろ、お前ら!?」

 その違和感の正体、それは2人の視界が少しズレたこと。そのズレは瀬野によって作られたものだった。

「なるほど…、あの首が折られた死体…、あれはこれで作られてたってことか」

 瀬野は2人の首の周りに突風を吹かせ、首を捻ろうとしたのだ。生半可な者に対しては、不可視の必殺となるのは間違いない。

「チッ…。俺じゃお前らには…。まあいい、」

 その言葉が聞こえると、白い空間にヒビのようなものが入り、いつの間にか瀬野とともに消え去り、2人は元の場所に戻っていた。

「逃げられたか…。あれ、陽葵っちいないっす。どこ行ったんすかね?」

「わからねえ…海部さんがヤツにやられたとも思えねえ。ただ…」

「ただ?」

 言いづらそうにして、一度顔を背け、黒田に目を向ける。

「あの男…瀬野が気になることを言っていた。もちろん、海部さんが外道だとかは微塵も思ってねえ。だが、何か隠してんのは確か、そう思っちまうんだ…」

「…いやー、風間さんすごいっすね。たしかに、千鶴も何か隠してる子だな〜て元の世界から思ってたっす。でも陽葵っちはいい人っす、それは確かっすから、また現れたら聞いてみるっすよ!」

「そうしよう。ああ、黒田は今からどうする?俺はアレンと合流しようと思うが…」

「千鶴も行くっす。どうせ何もすることないっすからね」


 風間たちが勇者を打倒した頃、教会のある広間では激戦が繰り広げられ、煌びやかな装飾のなされたそこは、血と肉で汚されていた。

「流石にキツいですね…。もう風間さんたちも最上階に到達する頃だと思います。チェアマン、ここは撤退するべきでは?」

 カルクとチェアマンを取り囲む、50人は超えているであろう騎士たちを見ながらカルクは言う。彼らは陽動のために戦い続け、もはや体力の限界だった。しかし、チェアマンは行動で答えた。

「くっ…、あなたの協力なしじゃ超えられない!頼む!」

「わかってるぜ、だから、だ!」

 チェアマンは懐からリールのようなものがついたナイフを取り出し、天井に向かって投げつける。天井に当たる直前にカルクを抱き寄せると、2人の体が宙に引っ張られていく。

「ギャ…ッ!」

「ん?グハッッッ!!」

 宙に投げ出された後、チェアマンは何かに気づき、自分が上になるようにした。そのまま、天井に激突し、チェアマンは激痛を伴いながらも、そこを破壊して上の階に出た。

「こんな無茶な移動するなら教えてください!」

「教えても了解してくれないと思ったからな」

 その場で口喧嘩が勃発しそうになるが、カルクは言葉を飲み込み、歩き出し、あることに気付く。

「ここは…どこだ、覚えがない。こんな部屋…」

 教会の関係者であるはずのカルクが知らない部屋。それがあることでカルクは警戒して、辺りを見回す。

「あの鏡…なんか歪んでねえか?」

「まさか!」

 カルクが異常と気配に気づき、上を見ると、そこには黒い翼の生えた女がいた。



瀬野のキャラ作りがんばったので、そこだけは評価してほしいです

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