神国 リターン 1
転移者の能力に関する話を終えた後、壮一はアナに呼ばれ、気味の悪い物体ばかりが置かれた部屋に来ていた。
「そういえば奴ら、教皇に指示されてお主を攻撃しようとしたと言っておったぞ」
「なんだと?」
自身を攻撃する目的であったと聞き、壮一はしかめっ面になる。
「奴らのうちの1人がお主がわしの船に乗っておることを、能力で突き止め、わしの船を襲撃したのじゃ」
「どうして俺を?心当たりは…いや、あったな」
「そういうことじゃ。フッ…ハハハハハ!アインス領で恨みを買っておったのじゃなあ!あいつらがべらべらと喋ってくれたぞ。…で、どうするのじゃ?」
「…俺の蒔いた種だ、自分1人でケジメはつける」
そう言うと、壮一は走って外に出て行き、アナは1人部屋に取り残された。
「おい待つのじゃ…。奴らは教皇に召喚されてこちらに転移したと。……、話を聞かんやつじゃ…」
壮一が何も言わずに船を降り、神国の首都に向かっているところ、総括者が目の前に現れた。
「お久しぶりですね。壮一さん」
「あんたは…総括者。何の用だ?」
「申し訳ありません。どうやらこの世界の神が好き勝手しているようでして、壮一さん…気をつけてくだ」
言葉の途中で総括者は消えた。束の間の出来事に、総括者が自身の目の前に現れたのは幻覚だったのではないかと疑ってしまう。
「消えた…?一体何が起こってるんだ……」
その疑問に答えるものは誰もいなかった。しかし、真実を知るときは刻一刻と迫っていた。
神国 首都 セントラァテナ、そこにある中央教会の会議室では、8人の男女が集まっていた。
「全く、貴様が奴らで十分だというから良しとしたのだぞ。完全に失敗ではないか!どう責任を取る!」
「チッ…うるせえな。俺がその気になりゃ、お前てえど簡単に粉々にできんだぞ!最悪俺がやりゃいいんだろうが!」
丸々と太った男と黒髪の少年が口汚く言い争い続けていた。放っておけばいつまでも続きそうな様子だが、窓際に座っている女が声をあげた。
「いずれにせよ、彼か…彼女が我々に何らかの行動を起こすでしょう。その時は、貴方方にお願いしますよ」
女は立ち上がり、退出する。その背中をおとなしく見ていた他の者たちは、それから少ししてから退出した女を罵り始めた。
「全く、あの女は…。私にあのような態度をとるとは自分の身分を弁えていないらしい」
「身分?おっさん、あんたの身分で聖女サンをバカにできるとはまさか思っちゃいねえよな?」
先程喧嘩していた男たちの喧嘩が再び勃発しようとしたが恰幅のいい男の方は相手にしなかった。
「どこの馬の骨ともわからぬ…田舎娘!例え聖女であろうとも私のような貴き者には敬意を払うべきだ!」
しかし、今度は退出した女、聖女への怒りを露わにした。
「まあまあラースさん。私もあまりよく思ってはいませんよ。でもね、彼女には利用価値がある。今は我慢してください」
ラースを女が諌め、その会議は終了した。




