転移者たちの襲来 その二
襲撃者たちの武器は没収され、アナのストレージの中にある。それを改めて確認し、アナは操縦室の扉を開けた。
「アナ、俺たちに聞きたいことがあるんだってな」
そこにいたのは壮一と凛だ。しかし、アナに彼らを呼んだ覚えはない。スクリーンを見ると、ノアが悪戯っぽい表情をしていた。
「あの若造どもは、お主らと同じ世界出身じゃろ?」
「うーん、黒髪で顔も日本人っぽかったし、そうだと思う」
「そうじゃったら、なぜお主らは持っておらん能力を奴らは持っておったのじゃろうか?」
アナはノアの解析の結果をここに来るまでに聞いている。あの槍には触れたものを弱める性質、非常に壊れにくい性質、高速で動く性質があったのだ。槍に使われた物質によるものではなく、また魔法によるものでもなかった。そこで、これらの性質を付加させたのは能力であるとアナは結論づけた。
「わからん…。そういえば、総括者って奴が俺たちを転移させたんだが、そいつは俺たちにいわゆるチートは渡せねえと言っていた」
「お主らは能力を持っておらず、それを付与する存在はいない…。つまり、こちら側の世界の何かが奴らに能力を渡した、ということじゃな」
「そういうことだと思うよ」
ルメシュの城の地下で冷たい風が吹き、埃を巻き上げた。そこはアナの管理していた地下牢であり、今は別の人間に管理されている。今回の襲撃者たちがそれぞれ別々の牢屋に監禁されていた。
「もう話せますか?というか、話せますよね?」
女が尋ねたのは、槍を放った男たちの1人だ。男は俯いたまま、答えた。
「お前誰だよ、これ外して俺を出せ」
「まあまあ、私の質問に答えてくれたら出してあげますから。あなたたちに能力を渡したのは誰ですか?」
「誰が言うかボケ。お前が俺の言うこと聞け」
その時、空気が変わる。冷たい空気に男は身震いしてしまい、つい女を見てしまった。
地下牢のフロアに用意された一室。そこには複数の家具が持ち込まれ、暗く、肌寒いフロアには似つかわしくない部屋だ。
その部屋で、1人、女が本のページをめくる。




