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異世界子守道中  作者: トライド
第二部 神国ジンパク
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黒い物体

 壮一たちはクロォイと出会い、彼の案内で操縦室の前まで戻ってきた。クロォイが去って角を曲がって見えなくなった時、ノアの声が操縦室から聞こえてきた。

「どうやら呼ばれているみたいだな、入るか」


 壮一が扉を開けると、既にディスプレイにノアが映っており、なにやら不機嫌だった。

「もー、みんなすぐに外に行っちゃって。もっと話したかったんだけど!」

「ご、ごめんなさい。なんだかアナさんに夢中だったし、邪魔かなって思って」

「ぜーんぜん邪魔じゃないです。このノアの頭脳を舐めてくれるなあ、同時に複数人相手するくらいお茶の子さいさいですから」

「ていうか、あなたの素はそんな砕けた感じ、ですね」


 ノアは最初こそ、理知的な雰囲気を醸し出していた。だからクロエたちがノアの豹変に驚いたのも無理はなかった。

「ところで、どうして私たちを呼んだ、ですか?」


 そうクロエが尋ねると、途端にノアの表情が真面目なものになった。

「この船の進路上のジンパクの首都上空に妙な気配を探知しまして。…、アナと彼が出ても危険なものかもしれませんので、壮一さんに協力していただきたいんです」

「…、仕方ねえ。アナに関わってるんなら手伝ってやる。だが、俺以外は使うな」

「ふーん…、わかってますよ。ええ、ええ、もちろん」

 壮一を見下ろす、冷たい目が電子の虚空に浮かぶ。気味の悪さがそこにあった。


 3人の男女が黒い何かの近くを飛んでいる。アナ、クロォイ、それに壮一だ。

「たしかにこれは、妙なものだな」

「これは…、一体何なのでしょうか?」


 3人が見つめる先には、球状の黒い物体があった。クロォイと壮一の2人は怪しく感じたが、アナはもう興味を失ったようだった。

「お主らは気にせんでもいいのじゃ。クロォイ、お主をこんなことに付き合わせて、すまんかった。壮一もな」

「お気になさらず、アナ様」

「あんたがそう言うなら、俺は気にしないことにしよう」



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