空で
その女は操縦室へ突然現れ、さらにアナに抱きつき、場を凍りつかせた。その女は、ノア。レイは大変そうだとは思ったが、近寄りたくなかった。誰もアナを助けず、そのまま話すことにした。
「で…、そいつはノアなのか?」
「え、助けてくれんの…?まあよい。そうじゃ、この船を作る際に、並行して作ったノア用の体ぞ。以前から試作を繰り返しておったが…あの魔族の体が役に立ってくれたわ」
「何か不穏な感じがする、ですが。ともかく、そいつはノア、ということでいい、ですね」
アナは頷いた。
それから、アナとノアを置き去りにし、レイたちは甲板に戻った。船の内部は船らしい物があったが、やはりそこは、船の上とは思えない場所であった。
「今日の所はこの辺にして、アナさんが使っていいと言っていた家に行ってみませんか?」
「さんせーい!」
「おい、待つんだ…。クロエ、お前もか!」
レイは歩いて彼らについていった。しかし、3人が間違った方角に走っていることに気付き、焦りだす。そこへ、アナがやってきた。
「元気じゃのう…」
「あ、アナさん…お願いします。あの3人を追いかけてくれませんか?」
「壮一もおるんじゃ、そのうち気付くじゃろ。ところで、お主も大変なようじゃな…その大怪我、何があったかは知らんが」
アナはレイの包帯を巻かれた体を見た。しかし、詮索はしなかった。尋ねてほしくなさそうにしているのを察したのだった。
「お主に聞いておきたいことがある」
アナがそう言って一呼吸置き、レイに何かを言った。その後、2人はアナが開いたゲートの中へ消えた。
「全く…お前ら、好き勝手走りやがって。ここどこだよ…」
その頃、3人は迷子になっていた。2人が壮一の上手だったからだ。魔法を使い、壮一を翻弄しながら逃げ回った。その結果、アナの言っていた家から遠く離れた場所まで来てしまった。
「おや、こんにちは。もしかしてあなた方はソーイチ様、リィン様、クロエ様では?」
「そうだけど、おじいさんは誰?」
迷子になった彼らに話しかけたのは、あまりにもダサすぎるTシャツを着た初老の男だった。しかし似合っているのが謎であった。
「ご無礼をお許しください。私はアナトリア様の相談役を勤めておりました、クロォイと申します。以後お見知りおきを」
「そうだったのか…。実は迷ってしまってな、操縦室か…、甲板の入り口まで案内してくれると助かる」
「もちろん、構いませんよ。さあ行きましょう」




