アレン・カルクという男
「レ、レイさん!大怪我じゃん!どうしたの?!」
クロエとレイが衝突した翌日、凛は驚いた。朝起きて宿の一階に行くと、顔以外の至る所に包帯を巻いたレイがいたからだ。驚くのも無理はない。
「あ、あはは…。ちょっと派手に転んじゃって、魔法で治療しても治らなかったんですよね…」
実際はクロエが弾丸にある魔法を付与していたせいで、レイは自然回復を待つしかなかったのだ。それゆえ、レイの隣でクロエが申し訳なさそうにレイの言い訳を聞いていた。
「おい凛!今日はキッチンを借りて俺が飯を作ったぞ、…焼きそばだ!」
そこへ壮一が巨大な鉄板に載った大量の焼きそばを持ってきた。
「やったー!!!」
「…朝からこの量、ですか?」
「すごい美味しかったよ」
「辛い!濃すぎるなんてもんじゃないですよ!」
「…壮一はこれからご飯作ったらダメです」
「なんだと!?」
その後、壮一と凛が焼きそばをほとんど全て食べた。一口食べただけで、彼女らが食べるのをやめてしまったからだ。
「自信があったんだが…くっ…。すまなかった、何か食べる物を買ってくる」
「私は美味しかったけどな…。だったら私も行くよ」
「おじさん、それじゃ帰ろう?」
「ああ、そうだな」
壮一を除いた3人分の朝食となるものを買い、2人は帰ろうとした。しかし、そこで呼び止められた。
「おはようございます。風間さん、お嬢さん」
「おはよう。いや、あんたどうして俺の名前を知ってる?」
壮一が警戒しているのを感じ取った凛は挨拶を返さず、壮一の背に隠れた。しかし、それを見た男が悲しそうな顔になった。
「…どうしてですかね?私はこう…怪しまれるんですよ」
「あんたの話しかけ方とか、雰囲気だろうな」
男は遠くを見つめて言った。
「そうだったんですね…。私はアレン・カルクと申します。この街の首長です」
その男、アレン・カルクは自らをこの街のトップだと名乗った。
その後、アレンは用があると言って壮一たちについてきた。本当は自分の館に招待したかったらしいが、今は問題があるらしい。
「また、ですか?壮一さん」
胡散臭い雰囲気の男を引き連れてきた壮一に向かってレイが言った。その意図を感じ取ったのか、アレンが再び悲しそうな顔になった。
「まあ、いいです。おはようございます。壮一さんとお話しください」
レイは自分の朝食を受け取り、凛とクロエに支えられて部屋に戻った。
壮一とアレンは再び宿を出て、下水道まで来ていた。アレンが内密に話したいと、ここまで案内したのだ。
「彼女の怪我…やはり、チェアマンとあなた方に何かあったというのは確かなようですね?」
「…ああ、そうだ」
「そうでしたか…。彼と一悶着あったことを承知で、単刀直入に言います。私と、チェアマンに協力してほしい」
ようやくカルクが出たか




