目を合わせて
「クロエさん…もうやめにしましょう。このままじゃ、余計な恨みを買いますよ?」
レイはクロエに話しかける。彼女は結局のところ子供だ。精神的に不安定な時期に見るべきではないものを見てしまったから、今は錯乱しているだけだと思ったからだ。しかし、クロエは答えない。ただ俯き、震えて立っていた。
「…わかった口を聞くな!」
壮一がその瞬間動こうとしたが、止まった。なんとなく動くべきではないと思ったことと、チェアマンが前に立ちふさがったからだ。
「後悔したくなきゃ、おまえは動くな」
「…クソっ…いや、あんたの言う通りだ…」
壮一とチェアマンが対峙している中、金属と金属がぶつかり合う音がした。クロエが発砲し、それをレイがどこからか取り出したフライパンで防いだのだ。
「私は…、運良くそういう場面にあったことは一度もありません。でもね、私は心配なんですよ、あなたが」
「心配…ですか?」
「ええ、さっき言いましたよね。余計な恨みを買うって。…本音を言うと、私は輩を相手にすること自体やめてほしい、それだけで恨みは買いますからね。ですが、それ以上はダメです。いつか…死にますよ」
クロエの瞳がレイへとまっすぐに向けられた。
「…どういうこと、です」
「ただ木っ端を相手にするだけなら、そこで終わりです。でも、こんな見せしめのような仕事は、全体の恨みを買います。厄介な大物が現れたら…いくらあなたでも終わりです」
クロエがレイの空気に呑まれる。いつになく真剣な表情をしていることに気付いたからだ。彼女は本気で、クロエを思っている。
「…う…、でも、私は…クソどもを始末しなきゃなんねえんです!」
「どうしてあなたが、そんなことをしなければならないんですか?」
クロエはそれに答えず、レイに突撃した。銃弾が雨あられとレイに降り注ぐ。しかし、レイは無傷で立っていた。
「私、こう見えて結構強いんですよ。まあ、一対一なら、という枕はつきますが」
ゼロ距離で弾を食らわせようとし、近づいたクロエだったが、思わず後ろに飛んでしまった。恐怖ゆえだ。
「レイ、おまえ、何者です?」
「私は元メイドの現料理人ですよ」




