今宵お見せ致しますは
ようやく壮一とレイが復活した時、既に日が沈んでいた。宿の主人に軽く食べられるものを注文し、席で待った。
「まだ頭痛がしますが、とりあえず動けるくらいには復活しました…」
「ああ、俺もだ。そういえばあいつらはどうしてるんだ?悪いが部屋に行って見てきてくれねえか」
「ええ、いいですよ」
レイが部屋に行くと、既に明かりは消えていた。しかし、そこにいるのは眠る凛だけだった。
「た、大変です!クロエさんがいないんです!」
レイは慌てて壮一にクロエが部屋にいないことを伝えにきた。今までクロエが勝手に夜中一人で出て行ったことはなかったからだ。
壮一の表情は、瞬時に真剣なものになった。
「すまねえ!店主さん!連れがいなくなっちまった、飯は置いといてくれ!」
そう言って壮一は駆け出し、レイは訳がわからないまま、壮一についていった。
「な、なにか、あったん、ですか?!クロエさんに!」
レイは急に慌てだした壮一の様子が気になり、クロエに何かあったのかと思った。それは正解だった。
「盗賊団退治したのはほとんどあいつだ。俺たちは攫われてた女たちを街まで護衛しただけだ」
「それなら普通じゃないですか。クロエさんならそれくらい…」
「あいつは、洞窟の中にいた奴を、全員バラバラにして殺してたんだ。洞窟に戻ってあいつの顔を見たとき、俺はゾッとした」
レイは青ざめた。クロエは強いと思っていたが、そのようなことをする人間だとは思っていなかったからだ。それに、それはどう考えても普通からは逸脱した行為だ。
「…はやく探しましょう。またそんなことをする前に」
「…ああ」
壮一は深く頷いた。
彼らが大通りに出ると、まだそこは賑わっていた。クロエを見なかったかとその場にいた人たちに尋ねると、すぐに答えが返ってきた。そして、簡単にクロエの現在地にたどり着いた。
そこは、凛とクロエが警告をされた家の前だった。
意を決して壮一が扉を開くと、そこには3人の姿があった。
「はっはっはっはっ、クロー。いい筋してるじゃねえか。でもな、まだ甘い。こうやって刺すんだ!」
切り裂くような悲鳴が聞こえた。机に横たえられた男にはいくつものナイフが刺されていた。
ーちっ、やっぱりこんなことになっちまってたか。変な男と関わっちまってるのはヤバそうだ…。しかし、今までもこれをしていたようだが…どうしてさっきまで悲鳴の一つも聞こえなかったんだ?
壮一の疑問に答えるようにレイが言った。
「壮一さん…、ここ、魔法が使われてます。防音効果のある魔法みたいです」
そのレイの声でチェアマンとクロエがこちらに気付いた。
「あーららー?あなた方はァ昨日の夫婦さんじゃないか!だめだぜ、ガキを一人にしちゃ!オレみたいになっちまうぜ。ハッハー!」
チェアマンが笑い、クロエがバツの悪そうな顔をした。
ークロエさんのあの表情…、まだ、完全に壊れたわけではなさそうです。
レイはクロエを救う決意をした。




