アマテラーで
壮一が目覚めてから少し経った後、彼らは広場を出た。今は門の所で馬車を置いているが、いつまでも置かせてもらうわけにもいかない。早く宿を見つけて馬車を動かさなければならなかった。
「この街の宿はどこにあるかわかるか?」
「わかりません、尋ねてみましょうか。…、すみません、ちょっといいですか?」
レイは近くを通りがかった男に声をかけた。
「何でしょう?」
「この街の宿について教えてください」
「お子さんがいるようですし…、この道を2分程進んだ所にいい宿がありますよ」
レイが感謝を告げると男はすぐに去っていった。その背中を壮一とクロエがけわしげな表情で見つめていた。
その後、馬車を宿まで引いてきて、宿の部屋を借り、馬車と血虎を預かってもらった。まだ日は落ちていないので、街へ散策に出ることになった。
「これからどうする?」
「私、服欲しい!」
壮一が尋ねると、すぐさま凛が答えた。凛はこの街が気になって仕方ないらしい。それから街を歩いていると、高級感ある店が目に入った。ショーケースに服を飾っており、服屋であることは一目瞭然だった。
「あそこ行ってみよう?」
「とりあえず入ってみるか」
「…絶対高いですよ。あそこ」
「金なら、ある、です」
一人だけ金銭的に心配していたが、彼らのうち2人は大金を持っている。臆することなく、レイを置いて先に入店してしまう。
「やっぱり高い…」
入店後、レイは見えてしまった値札の数字に恐怖を抱いた。
「凛の服、選んでやってくれ。あんたも服が欲しかったら代金はこっちが持つ」
「え、いいんですか?」
「ああ、その代わりいい服を凛に選んでやってくれ」
壮一はそう言うと男物のコーナーに歩いていった。
数分後、壮一は先に服を選んで会計を済ませた。女性陣はまだ服選びに時間をかけているようだったからだ。
ー暇だな、ちょっと近くを歩いてみるか。
そう考えて凛たちに先に出ると伝え、アマテラーのギルドに向かうことにした。しかし、ギルドの場所がわからないので近くの人に聞く。
「なあ、あんた。ギルドはどこだ?」
「あんたギルドに行きてえのか。だったら俺も今行くところだからついてこいよ」
「そうだったのか、じゃあ頼むぜ」
偶然にもギルドに行くところだという男についていき、数分でギルドに到着した。壮一が男に感謝を告げ、そこで別れた。しかし、暇つぶしにきただけで用はなく、ギルドの中を眺めることにした。そこで、受付の中に見覚えのある赤い髪のメガネの女を見つけたので、その女の受付の列に並んだ。壮一の番になり、女は壮一を数分見つめた後、驚いた顔をした。
「あ、あなたは壮一さん!お久しぶりです。ルメシュから転勤になったからもう会えないかと。ところで、いいところに来てくれましたね。受けてもらいたい依頼があるんですけど」
「おう久しぶりだな。で、俺は何をすればいいんだ?」
2人は挨拶を軽く済ませて本題に入った。
「最近、盗賊団がアマテラーの近くの山にアジトを作ったらしく、被害が続出してるんです。若い女性がさらわれたりもしてるんですが、盗賊団は強いようで受けてくれる人がいなくて。そこで、オーガを単騎で倒した貴方に頼みたいんです」
「おう、任せろ」
そう言って壮一は一人で出発しようとしたが、女が手を伸ばして壮一を掴んで止めた。
「いやいや何をしてんですか?!仲間いるでしょ?!」
女は壮一を焦って止めた。流石に一人では無理だと思ったからだ。壮一も相手の実力がわからない以上無茶だと考えて仲間を集めるようと思った。
「さっきのにいちゃん!仲間が必要なら俺も行くぞ!」
そう言ったのは、先ほど、壮一をギルドまで案内してくれた男だ。
「じゃあ、頼む。よろしくな。俺は壮一だ」
「おう、オレはガルガだ。結構強いぜ。よろしく」
「壮一さん!依頼を受ける時は私、ミリアにお願いします。また一人で行かれたら怖いですからね!」
「あ、ああ…ミリア、そうさせてもらう。じゃあ行ってくる」
壮一とガルガはギルドを出た。