四十話
ちょっといつもより長めです
魔族は牢屋に直接送りつけられ、これで今回の敵は全て再起不能にされた。王子、クロノはルーシーの回復魔法により、一命をとりとめたが、足は失った。しかし、どこか満足げな表情でアナが呼んできた衛兵に連れていかれていった。
数時間後、王の間に、宿に残っていた面子も合流して、今回の事件に関与した者が全員集まっていた。
「結局奴隷を買ったのはあの魔族で、そこらへんに関してはあの王子は無罪だったな。まあ、あの魔族に唆されたのは事実だったのは残念だ」
「安心したのじゃ…、わしの弟が幼児に乱暴働くような下衆でなくて…」
アナが元奴隷の幼女を見ながら壮一に言った。その表情からは安堵が見て取れた。ここでガロンが本題に入った。
「しかし、魔族か。今までそんな奴らが何かしたって話は聞いたことねえな。上手く隠れて今回の事件にも関与していたようだし、まだ安心してらんねえんじゃねえか?」
本題は魔族のことであった。ベイルは好戦的であると自称していたが、今回の事件までは、その正体を見破られるようなヘマもしていなかった。魔族とは頭脳派の種族であり、すでにこちら側に多数潜伏しているのではないかというのがガロンの考えだ。幼女を除いた全員が頷いたりして賛同の意を示した。
「人は乱世を求める魔族に後手に回されてしまったってことですね。しかし、魔族がどこで何をしているかはさっぱりわかりません。些細なことでもおかしなことがあったら、注意するようにしなければならないみたいです」
レイが現状を整理して、今できることを述べた。わからないことが多すぎるため、対策の立てようがほとんどない。レイが言う通り細心の注意を払うことしかできない。
そこでアナとルーシーが壮一とクロエとレイに目を向けた。目を向けられた3人はなんとなく嫌な予感がした。
「そういえば…、あなたたち根無し草みたいなものだったわよね?他国に行って…、調査してくれないかしら、お礼はするわ」
「良い考えじゃ、この国は王たるわしが責任持って見る。お主ら、可能であればじゃが、調査を頼まれてくれんかの?」
3人は考えた。王族に恩を売っておくのは悪いことではなく、調査くらいであれば気楽だ。探しても見つかるかわからないから、魔族に喧嘩を売られることもほどんどないだろう。礼とやらもさぞ素晴らしいものだ。3人の意思は決まった。
その後、アナの作ったマジカルフォンあるふぁという魔力によって機能する電話を受けとり、調査を引き受けた。
王城正門に皆が集まっていた。凛もゲートでこちらに来ている。ここで別れだ。
「それではの、また会おう!壮一、クロエ、凛、レイ!」
「さよなら…。楽しかったわ、また、会いましょう」
アナとルーシーは笑顔で再会を願った。
「元気でな、また会おう」
「ルーシーさん、少しの間でしたが楽しかったです!アナさんもまた会いましょう」
「アナさん!またお話ししようね!」
「…まあ、悪くなかったです。いつかまた、です」
壮一たちも再会を願った。次は何事もないままに出会えるように。
4人は王城に背を向け、歩き出した。
そこで思い出したかのように、壮一が立ち止まり、振り返った。
「お前はこれからどうするんだ、ガロン?」
「あ?俺は姉さんからさっきここに滞在しろって指示が来たし、この娘たち引き取ってスローライフでも楽しむわ」
「ふっ…子供の相手は大変だぜ?」
ガロンは面倒見が良く、幼女たちに懐かれていた。その様子を見てこいつなら大丈夫だろうと思いながらからかうように言った。
「楽勝だ、子供の相手なら結構経験あるもんでね」
そう言ってガロンは子供たちを連れて街の中へと歩いて行った。姿が見えなくなったところで、クロエがボソリと言った。ガロンの名誉のため、なんと言ったかは述べないでおこう。
第3章
気に食わねえ
終
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