三十八話
「無事か!クロエ!ルーシー!ガロン!?」
「なんだ?壮一クン、俺たちはなんともねえぜ」
城の中へと急いで戻った壮一たちは無事な仲間たちを見て安堵した。しかし、疑問が生じた。
「王子や魔に属する者とやらはどこにいるんだ?」
「王子は…今ここに近づいてきているようじゃな。壮一と…ルーシーに奴を任せるのじゃ」
壮一とルーシーはアナの言葉に頷いた。
「お前らには、魔に属する者とやらの捜索を頼みたい。できれば倒しちまってくれ」
それを聞いた3人の顔が驚きに染まる。ここにきて、新たな厄介そうな敵が現れたからだ。
「それじゃ…姉さんたち、そっちはよろしくね」
「…まかせろです」
再び王の間にて、壮一とクロノは相対していた。さらに、今回はルーシーもその場にいた。これで対等な勝負になった。
壮一は必ず勝ち、そして平穏な日常を取り戻すことを決意した。
ルーシーはクロノを打ち倒し、国民を守ると誓った。
クロノは彼らを排除し、国を守る、それだけだ、そう考えた。
再びクロノが分身を行い、2人のクロノと壮一とルーシーの決戦が始まった。
壮一はクロノとの先ほどの戦いで気付いたことがあった。クロノは確かに強い。しかし、技術が大きなウェイトを占めた強さであり、パワーは壮一の方が圧倒的だった。その差はゴリラと人の差に等しい。さらに壮一はオールラウンダーともいえ、技術もまたクロノ以上。今回はサシで戦えるのだから、勝てると思っていた。
しかし、そう甘くなかった。
「うあ…っ、ごめんなさい壮一!」
壮一のもとにルーシーが吹き飛ばされてくる。それを難なく受け止めるが、クロノはそこを見逃さない。魔法によって炎を撒き散らしてきたのだ。
壮一はルーシーを抱えたまま走り、叫んだ。
「ルーシーッ、火を消せ!」
「わかった…っ」
ルーシーが応え、壮一に炎が肉薄した途端に火が消えた。
「流石ですね、やはり魔法ではあなたに敵いそうにはありません。ルーシー姉さん、ですが、魔法を使わせなければいいッ」
実際に先程は全く魔法を使わせなかった。クロノはルーシーに隙を見せず、また魔法を食らわないように動き続けていた。
2人のクロノがルーシーを抱える壮一に殴りかかってくる。壮一はルーシーをクロノたちの背後へ投げ飛ばし、それを見たクロノの片方がそちらに行こうとするが、もう一方のクロノに殴られながらも両方の腕を掴み、捻り上げた。
「人を投げるな…!でもこれで終わりよ!」
投げられて空を飛んだまま、ルーシーはアビスを発動する。クロノの足はアビスに囚われ、膝下を千切られた。
悲鳴が響き渡る。もちろんクロノのものだ。しかし、まだその闘志は尽きていない。但し、狂乱状態となっていて魔法をむやみに発動させているだけだ。そんなものに壮一が遅れをとるはずもなく。
「寝てろ」
顔面を踏みつけ、これでクロノは気絶した。分身の方もそれで消えてしまった。
「盾役がいれば、強敵でも余裕ね…」
自分1人では勝てないクロノが壮一と一緒なら割と簡単に勝ててしまったため、ルーシーはこれから単独行動を必要最低限にしようと考えた。
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