三十七話
壮一はまずアナを解放すべきだと考えた。このまま1人で戦っていても、壮一が消耗させられるだけだからだ。
ーまずは、こいつらを離さねえと。
後ろに倒れるようにして、クロノの攻撃を避ける。そのままバク転を行い、懐から取り出したナイフを構えて立ち上がった。その後ナイフを窓に投げて破壊し、アナの元に走る。壮一と目があったアナは何かを察し、首を外れそうな勢いで振るが、もう遅かった。壮一はアナを肩に担ぎ、窓の外に飛び出した。
落下中、アナは壮一に何かを伝えようとしていた。自らの口元を壮一の手に近づける。
アナの意図を察した壮一は猿轡を外した。
「なんてことをするんじゃ!もうだめかと思ったのじゃぞ!どうせこの後のことはわしに任せるつもりじゃろうっ、はやくわしのティアラを外せ!」
自分の考えを言い当てられた壮一は軽くへこみながらもティアラを外した。
「グラビティアルター!ゲート!!」
次の瞬間、壮一たちはどこかの湖に激しい水音を立てて落下した。
「ずぶ濡れじゃ…。早く乾け〜乾くのじゃ〜…」
アナと壮一が落下したのは城のすぐ近くの湖だった。アナを拘束していた拘束具は既に外され、2人の服はアナが魔法で乾かした。
「それにしても、死ぬかと思ったのぉ」
「それに関しちゃすまん。仲間とも来ているんだが、どうにもあの城には嫌な感じがしてな。とりあえず、あんたを連れて離れることにした」
アナは納得した様子で言う。
「なるほどの。ならば壮一の行動は正解だったと言ってやるのじゃ。あそこには魔に属する者の気配がしたからの、わしがあの場で伝えたかったのもそれじゃ」
「魔に属する者…、ああ、南の果てにあるって言われる暗黒大陸の住民のことか?」
「そうじゃ、隠れたつもりじゃったじゃろうが、城を異界にするなんてことをすれば、流石にバレるじゃろうて」
異界という言葉が壮一は気になった。
「異界…てのは言葉通りに受け取ってもいいのか?」
「む…。そうじゃな、それでよい。ただ、まるっきり違う世界を用意するのではなく、もとある世界に法則を追加したりするものじゃ」
「なんかやばそうだぜ…」
そこで2人は目を合わせた。
「あいつらが危ない」
「ルーシーたちが危険じゃ」
アナが開いたゲートに2人して急いで飛び込んだ。