三十四話
「お前は…、誰だ?」
クロエと庭師の激闘の最中、町の中で兵隊に見つからないように、路地裏を歩いていた壮一はある男と出会った。その男はただならぬ空気を纏っており、壮一を警戒させた。
しかし、壮一のこの懸念は杞憂であった。
「お主がソーイチ、殿かな?凛殿の知人のキラキラ族である。保護者、パシリとでも呼ぶといい」
その男の正体は今、凛を預かっているというキラキラ族であったからだ。ルーシーから聞いていた特徴とも合致していた。壮一は保護者への警戒を解いた。
「ああ…あんたが凛を預かってくれてるっていう保護者さんか。ありがとう。で、なんでここにいるんだ?」
「礼には及ばん。ギブアンドテイクであるからな。ここに来たのはな、お主らに力を貸そうと思ったからだ」
そこまで言って保護者は一拍置いた。ここから本題ということだろう。
「お主らに力を貸すのはそれがキラキラ族のためにもなるからである。そして、ここからお主を城の中へと入らせること、それが私にできることだ」
壮一は保護者の後ろを走っていた。城の中に魔法か何かで入らせてくれると思っていた壮一は保護者に言った。
「走るくらいあんたが来なくても、俺1人でできたぞ!?おい、行き止まりだ!」
その言葉を聞いた保護者は笑った。その瞬間、壮一は驚愕した。突然行き止まりとなっていた壁が崩れ、人が通るのに十分な穴ができたのだ。
「どういうことだ…。明らかにおかしいってのはわかるぞ。あんたの助けってのはこのことか?」
「そうだ。私は守ることと、この能力には自信があるが、それ以外はからっきしでね。とはいっても私が行けばそこに道ができるだけだが」
保護者は自身の能力について説明した。保護者の能力は、道を行くことである。保護者が進みたい方向に進むための道が勝手にできるというものだ。
「なんだかむちゃくちゃな能力だな…」
とはいっても、色々制限はあるがな、と保護者は付け加えた。その後、下水道に入り、そこから謎の狭い通路を走り、地下牢に到着した。
「ここは…ルーシーの言ってた地下牢か?てことはさっきの道がルーシーの言ってた秘密の道だな…」
ルーシーの言っていたルートからではなく、下水道を保護者が走っていると現れた穴から秘密の道に入ったため、今気付いたのだ。
ーこんな進み方ができるやつがいるなんてな。この能力…チートってやつか…。
壮一は少し保護者が羨ましくなった。
補足"保護者の能力"
道を行くことができる。しかし、あくまで物理的に可能な範囲内であり、何もないところから道はできない。条件は、可能性が現時点で存在することである。行き止まりであれば、その壁には壊れる可能性があるかどうか。また、道を抽象的に捉えたもの、例えば目標を達成するための道といったものを作ることはできない。あくまで可能な範囲内で歩く道を確保するのみである。




