三二話
城の中へと侵入することに成功したルーシー達。地下牢を出ると、そこは庭らしき場所だった。静かな場所で人は全く見当たらない。しかし、ガロンはなぜか胸騒ぎを感じていた。そこで、今の状況を分析することにした。
ー妙に静かな気がするな。城の中ってのはこんなもんなのか?いや、今は壮一クンがバカやってるから城の中も多少は慌ただしいことになってもよさそうだが…ッ!?
その時、線が見えた。ガロンと、クロエには。ガロンはルーシーを押し飛ばしながら、クロエは線の始点の方向を銃撃しながら線を回避した。
「な、何!?いきなり押し飛ばすなんて酷い…、いや、ありがとう」
ルーシーは攻撃に気付かなかったため、非難しようとした。しかし、地面に刺さったナイフを見て、助けてくれたことに気付いたのだ。
「どーいたしまして、お姫様。でもあいつは厄介だな。あんたは先に行け」
ガロンはナイフを投げた本人がおそらく、ここが静かな理由であり、刺客であると判断した。そして、この相手は、強い、そう確信した。
「…、ここは私に任せて、先に行け、です。たぶんガロンじゃ相性が悪い、です」
攻撃の直前まで気配を感じさせず、飛び道具を使った。遠距離攻撃をもつかなりの手練れだ。ガロンといえど分が悪いと考えたクロエはそう言った。
「…きっと貴女なら大丈夫ね、悪いけどここは任せる」
「なんか戦力外って言われた感じでショックだが、任せたぜ」
2人の激励にクロエはサムズアップで答え、再び飛んできたナイフを左腕で払った。
「はやく、行け、です!」
クロエの邪魔にならないようにガロンとルーシーは庭から素早く出て行った。
2人が出て行った後、激しい攻防が続いていた。ナイフと銃弾が飛び交い。美しかった庭はボロボロになってしまった。そこで、謎の刺客が声を上げた。
「実は私は庭師なんだ。ここは私の担当してる庭でね…、こんなになったのを誰かに見られたら叱られてしまうじゃないか。でも、貴女は相当出来るようだ…。庭をこんなにした代償として、久しぶりに…、楽しませてもらおうやないかアァア!!!」
突如、刺客の攻撃が苛烈になった。なぜか四方八方から大量のナイフが飛んできたのだ。
ーどうして、奴のいる方向以外からもこんなにナイフがきてる、です…!?
しかし、それで浮かんだ疑問について考える暇もなく、クロエは大量のナイフに対処しなければならなかった。今、クロエはナイフに気を取られてしまっている。そのため、あることに気づかなかったのも無理はなかった。
「ガ…はぅ…っ!」
ナイフに隠れるようにして、庭師は静かにクロエに近づいてきていた。そして、拳を食らわせたのだ。
「この程度かいな?つまらんの〜。ま、よくやったほうやとは思うけどな、やっぱりつまらんわ」