三十一話
壮一が兵隊に追われ、一旦廃屋に息を潜めていた頃、ルーシーは宿にいるガロンと合流していた。
「よお、壮一クンがいないじゃねえか。今騒がしいが、もしかしてあいつが原因か?」
ガロンは半笑いでルーシーに尋ねる。冗談のつもりの発言だったが、それが事実であった。それをルーシーが伝えると、ガロンは真顔になり、言った。
「あいつのことは知らん。俺たちは俺たちで動こう」
夜が明けて、壮一以外は宿で合流していた。壮一が独断行動を行なったことで、王城に潜入する人数が減ってしまった。全員で計画の見直しをしていると、レイが言った。
「壮一さんが陽動の役割をやってくれてるおかげで、城の中も多少手薄になっていると思います。表に出ている兵隊のだいたいは壮一さんを追っているみたいだし、思ったよりラクになるかも」
その言葉にクロエも頷く。
「それじゃ、子供たちのことは私に任せてください。無事に帰ってきてくださいよ?」
レイと子供たちを残し、ガロン、クロエ、ルーシーの三人は宿を出た。
その後、三人は狭い通路を歩いていた。アナが勝手に作ったという王城と、ある家屋を繋ぐ通路であり、アナとルーシーだけだった。2人で遊ぶ時はこの通路で外に出ていたという。
「2人の大事な秘密、教えてよかったですか?」
クロエがそう言って、ルーシーはニヒルな笑みを浮かべた。
「誰にも教えないまま、私と姉さんと一緒に闇に葬られるよりいいはずよ」
「ククッ、違いねぇ」
秘密の通路を通り、三人は王城の中へと潜入することに成功した。通路を抜けると、そこは牢屋のような部屋だった。鉄格子はあるが、本来鍵付きの扉があるだろう部分には何もない。牢屋の役割を果たしそうにはなかった。
「あんたから聞いてはいたがよ、不気味な場所があったもんだ…」
「今は使っていないとはいえ地下牢のフロアだから…、さあ行きましょう」