二話
光の輪を通った2人は、街道近くの草原に転移した。街は徒歩でも余裕な距離にあった。
「とりあえずあの街…、トパーズというのか?あそこへ行こう」
「うん。魔獣なんてのもいるみたいだし、早く行った方がよさそうだね」
壮一の問いかけに対して凛が答え、2人はトパーズへ向かった。しかし、街の入り口まで歩くと門番に呼び止められた。
「すみません、入場には身分を証明する物が必要なのですが、お持ちでしょうか?」
「いや…、田舎の出身でな。そういったものは持っていない。仮入場証を頼む。」
壮一はこの世界へ来る前に得た知識でこのシステムについて知っていた。簡単に受け答えを済ませる。
「わかりました。役場とギルドはこの道をまっすぐ行けば見つかります。そこで身分証明証を作ってもらってください。」
「ああ、わかった。」
2人が歩き出そうとしたところに門番が声をかけた。
「ああ、そうだ。あなたがたの服装は珍しいので下衆な者が良からぬことを考えるかもしれません。お気をつけて。」
「おにいさん、ありがとね」
「親子揃って礼儀正しいようでなによりです」
2人は歩きながら役場とギルドのどちらかに行くか考える。役場は町人としての身分証明証、ギルドでは冒険者としての身分証明証を発行する機関である。
まずは、簡単な依頼で資金を調達するために冒険者になることにした。ギルドに入ると、そこには、剣や斧を持つ者、ローブを着て杖を持ついかにも魔法使いといった風貌の者たちがいた。奥のカウンターにいる者たちが受付のようだ。
壮一は赤い髪のメガネをかけた女に発行を頼んだ。
「すまない、田舎から来た者でな…、身分証明証の発行を頼めるか?」
「むっ…、わかりましたよ。あなたがた、ワケありですね!もちろんですよ‼︎こちらの紙に必要事項を書いてください」
何か勘違いしたのか、興奮気味の女。転移してきたためワケありではないとは言い切れないが。
女が紙とペンを差し出してきたのでそれを受け取る。2人は記載されている事項に従って必要事項を書き出すが、問題が生じた。
「あの、おねえさん。魔力量をまだ測ったことないから、測る物貸して?」
「う〜ん、本当に田舎から来たみたいですね。まま、こちらの水晶をどうぞ。」
見当違いに気づいた女は受付の棚から水晶を取り出した。
まず、壮一が触れ、並程度だということだった。しかし、凛が触れたところ、水晶が破裂した。
とっさに壮一が凛を庇い、女は破裂した水晶を見て驚愕していた。
「これはどういうことだ?」
「わからないですね…。計測不能な魔力量ということだと思いますけど…」
ーこれはどういうことなの?
凛は心の中で総括者に尋ねる。総括者によれば、凛の魔力量は非常に多いらしい。これは流行りの魔法少女が戦うアニメを観ていたことで、魔法に関するイメージが強いことが原因のようだ。凛は魔法少女に感謝した。彼女にとって魔法少女は一番のヒロインである。
「それでは壮一さん、凛ちゃん。こちらが身分証明証です。良い旅を」
「ところで、一文無しでな。さっそく依頼を受けたいのだが」
「それなら、あちらの掲示板に貼ってある依頼書をとってください。依頼を完了したら、またここへ来てくださいね」
2人は掲示板で依頼を探す。薬草10本の納品依頼があったため、それを取り街の外へ出た。
街道から外れた森へ向かい、薬草を多めに取って街へ戻ろうとする。そのとき、男と女の悲鳴が森の奥から聞こえて来た。壮一は別行動は危険と考え、凛を連れて状況確認のために悲鳴が聞こえた場所へ、茂みをかき分けながら近づいていく。
茂みの奥にいたのは、オーガと呼ばれる危険な魔獣だった。
「おまえら、逃げろ!」
壮一はオーガに襲われていた者たちに逃げるように声をかけ、対峙する。
話の展開よりも、凛の壮一の呼び方に悩む。鉄板だとおじさん…がいいですかね?