二十六話
一晩を森を抜けた先で過ごした壮一たちは、全員馬車に乗り急いでいた。森の中であった昨日までに比べ、血虎が好調であるため今日中に隠れ家にはつけるだろう。しかし、速くなったためか、子供たちは少し車上酔いしてきているようではあった。
「う…気分悪いです。非常識です、こんな速さ…」
クロエが気分悪そうにそう言ったのを聞いた壮一は、血虎に速度を落とさせた。子供達だけではなく、壮一以外は内心気分が悪かったのか安心した様子を見せる。遅くなったことで景色を見る余裕ができたレイが何かを発見した。
「壮一さん、止めて!魔物がいます!」
前方に巨大な魔物がいた。こちらに敵意を向けており、ただでは通してくれない様子だった。
「よし、ここはオレの出番だな」
そう言ってガロンはいつぞや帳簿を送る際に使った鞄から、壮一と戦った際に使っていた棒を取り出した。魔物は全身が黒い色をしたオーク、ローブのような物をきている。このような魔物をガロンは知らない。これもまた、最近の新種なのだと判断して警戒する。
突然、オークはこちらに突撃してきた。進路から考えると、狙いは馬車のようだった。
ー魔物が馬車を狙うだと?!様子を見たかったが、先にやるしかねえじゃねえか…。
ガロンも武器を構えて突撃、勢いを利用して足にフルスイングを行う。オークはそのまま地面に倒れる。倒れたオークの頭をガロンはめった打ちにした。
「オレの!手を煩わせやがって。くたばれ!」
オークはそのまま静かになった。もう終わったと思ったガロンは馬車に戻ろうとした。
「あれでまだ立ち上がる、ですか…?しかたないです。ほら寝てるです」
そこでクロエが拳銃でオークを撃った。起き上がろうとしていたオークは今度こそ永い眠りについた。
「く、クロエちゃん…助かったぜ…。しかし物騒すぎる物持ってんな…」
「どういたしまして、です。魔法は結界で使えなかったりするですが、これは弾丸さえあれば使えるですから」
ルーシーもその言葉を聞いて頷いている。ルーシーも魔法が使えない状況があることを理解している。
「雇い主が強い…。私の就職先はとっても安心できそうです」
1人、ずれたことを考えていた。
その後は魔物に出会うこともなく、隠れ家に到着した。
「大丈夫そうね…。荒らされた様子もないし、ここは安全だったということか」
一通り見回してから、ルーシーたちに気付いた見張りから凛がいなくなったと報告を受け、別の場所に移したと伝える。他には何も起こらなかったようだ。
「いや、そんなこともなさそうだ…」
壮一がそう言うと、黒装束の集団が現れ、隠れ家の周りを包囲した。
「こ、これはまずくないですか?皆さん、頼みましたよ!」
「じゃあ、私は子供達を守ることにするわ。レイだけじゃ不安だし…、頑張ってね」
ルーシーとレイは戦いを壮一たちに任せ、クロエ以外の子供達を守るために家の中へ連れて行った。
「これで安心して戦える…絶対隠れ家の中に入らせるな!いくぞ!」
シリアス感出そうと頑張ったのでそこだけは評価してください