二十五話
ガロンを撃退し、ルメシュ王国の現状を聞いた壮一たちは引き続き隠れ家へ向かっていた。なぜかガロンもついてきていた。
「いや、壮一クンにレイちゃん。怪訝な目をするなって、詫びの代わりに手伝おうと思っただけだぜ」
そう言って肩をすくめるガロン。しかし、壮一には気になることがあった。
「勝手なことしていいのか?アリスに何言われてもこっちは知らねえぞ」
ガロンはアリスの部下であり、壮一の部下ではない。詫びとは言うが、理由もあった以上何かをさせるつもりは壮一にはなかった。
「つってもよ、ハナっから姉さんは俺を行かせるつもりだったんだ。んなことは気にしなくていい」
「えっと、どういうことです?」
アリスはそもそもガロンを行かせるつもりであったという。壮一たちをそのまま送り出していたのに、なぜガロンを別行動させたのか。
「なんていうかよ、俺はあんたらが帰ってこれるか確かめるために戦うためにここに来たわけだ。姉さんは俺に勝つかどうかで何か判断するつもりだったんじゃねえか?俺にはわからん、それより誰か近づいてきてるぜ」
ガロンにも理由はわからないらしく、めんどくさいのか話題を変えた。壮一やレイも気になっていたことだったのでその話題にのった。足音は1人のものしか聞こえてこないため、特に警戒はしていなかったが。
「誰でしょうか?また襲撃されたりするのは嫌なんですけど…」
「いや…、さすがにまた襲撃されることはないだろう。もしかしたら…」
壮一たちの近くで草を掻き分ける音がする。それから少しして、壮一たちが進む道の前方から1人の女が現れた。
「やっぱり、あなたがいたわね。壮一」
壮一たちはルーシーと合流し、現況を話し合った。壮一たちは王子失脚に向けた証拠の確保、ルーシーはアナが捕まったままであり、どこに捕らえられているかはわからないことを伝えた。
「確認もしておきたいし、一先ず隠れ家に向かいましょう、その後王都に」
今後の方針が決まった
「それにしても、またエライ別嬪さんじゃねえか、壮一クン。隅に置けねぇな?」
壮一は無視、ガロンはからかい甲斐がない奴だと退屈に思ったが、ルーシーが照れた様子を見せていることに気付いた。
「お、姉ちゃん。もしかすると、もしかするのかい?」
ターゲット変更とばかりにルーシーに話しかけ出すガロン。しかし、そう上手くはいかない。
「今まで、姉さん以外には褒められたりしなかったから…」
「なんかすまん…、まあ、なんだ、街歩きゃ引く手数多だと思うぜ…」
暗い話になった。
「と、ところで!ルーシーさん、よろしくお願いします、レイです。男どもは放っておいてガールズトークでもしましょう!」
レイが機転を利かせ、ガールズトークに持ち込んだ。馬車の中に2人とも入り、完全に放置された壮一たち。
「別に良いが…なんで俺まで悪いみたいになったんだ?」
壮一が呟くが、あたりは女性陣たちの会話を除いてはほとんど無音、少しして日が沈んだ。