二十二話
結界の改善を引き受けた凛は城の頂上に来ていた。四天王や夫妻も一緒だ。凛の担当は結界に外部からの侵入者がループする空間を作ること。パシリの担当は結界の魔法に対する強化である。四天王は念のための護衛だ。
「できたよ」
「ありがたい、凛殿。私の方はまだかかるので先に中へ入っておくと良い」
凛は手伝いを終え城の中に入った。ついて来ようとした四天王がいたが、断った。城の中を見て回りたかったのだ。
ーよし、どうせ怒られるなら楽しんじゃおう。
完全に開き直った凛は城の散策を行う。数分歩くと、気になる部屋を見つけた。他の部屋に比べて装飾が多く、何かがあると考えた凛はその部屋へと入る。すると、装飾の割には狭い部屋だったが、そこには一つの鏡が壁に埋め込まれていた。
普通の鏡かと思った凛だったが、じっと鏡を見ていると、鏡があり得ないものを映した。
ルーシーがどこかの部屋に手錠をされ、閉じ込められているのが見えたのだ。
「あれ、ルーシーお姉さん?」
不思議に思った凛は鏡に触れようとしたが、触れられなかった。手が鏡の中に、ルーシーのいる場所に入っていたのだ。
「すごい、魔法の鏡だ!ルーシーお姉さんを助けるためにも入ってみよう」
凛が部屋の中に入ると、ルーシーは顔を上げた。
「誰?もうどうでもいいけど…」
顔には絶望の色が強く、なにもかもどうでもよさそうだった。しかし、凛を見て驚く。
「どうしてここに?!なんてこと…。あそこも安全じゃなかったのだから当然か…」
なにやら勘違いをしているようだが、凛は気にせず、とりあえず助けることにした。
「ルーシーお姉さん、あっち見て。ここから出るよ」
「逃げるって、無理よ。ん、どこかにつながってる?」
鏡を通って独房から抜け出した凛たちは今の状況を確認することにした。
「なんでルーシーお姉さんは捕まってたの?」
「まずは助けてくれてありがとう。なぜ私が捕まってたかというと…、私たちの計画が第一王子に筒抜けだったからよ」
ルーシーが言うには、壮一たちと別れた後、第一王子の部屋に入ったところ罠に嵌められたらしい。その後、アナとは別の部屋にそれぞれ閉じ込められたという。
「どうしてバレてたのかな?」
当然の疑問だ。知る人はかなり少なかったというのに、バレていたというのは違和感がある。
「それは、私たちのなかに裏切り者がいたということでしょう。疑いたくなんてないけど」
その考えに至っていたルーシーは凛を心配していたが、半ば諦めていた。裏切り者が隠れ家もバラしていれば、魔法を使えるとはいえ凛も捕まってしまう確率の方が高いからだ。
「次は凛がなぜ隠れ家から抜け出しているかを聞こうかしら。もしかしてもう第一王子派が来たとか?」
「あのね、何もすることがなくて出ただけ…」
沈黙がその場を支配する。ルーシーとしては無事でいてくれて良かったと思ってはいるが、まさか暇だから抜け出していたとは考えていなかった。対して凛はルーシー達は捕まっていたのに自分は呑気にしていたことが後ろめたかった。
その結果が沈黙だった。
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