十七話
壮一たちがアリスの居城にたどり着くと、アリスが裏帳簿片手に待っていた。
「ご苦労様、もうすぐ報酬はここに来るから少し待ってなさい」
アリスは椅子に座って読書を始めた。いつのまにかレイを膝に乗せて。レイは困惑した様子を最初見せたが、少しして安心したような表情になった。
アリスの見せた謎の早業に壮一とガロンが驚き、どういった手段で成し遂げたのかを考えていると、ノックの音が響いた。
「入りなさい」
それから少しして、一人の男と3人の少女が現れた。
「アリスの姐ぇェえ!連れてきあしたァ!」
「そう、はやく帰りなさい。静かに」
「うっせえなぁ、ちっとは静かにしろよ」
「おぅすっ!!失礼しまっす!!!」
連れてこられた3人の少女の内2人は不安そうにしていた。それは無理もないことで、"色々"あった後、知らない場所に連れられて大人達に囲まれているのだ。そんな中、アリスが口を開く。
「報酬よ、2人の生き証人に…、証人の証拠としての力を強めるための子よ」
「色々聞きたいことはあるが、とりあえず第一王子が何をしでかしてたのか聞こうか」
何となく予想がついた壮一だったが、尋ねた。案の定誘拐や奴隷の購入を行うなどの所業を行なっていたらしい。ここアクアマリンを利用してそういったことをしていたため、アリスに筒抜けだった。そこで今回、誘拐した少女と購入した少女を運んでいる馬車から連れてきたらしい。
「…というわけよ。第一王女の所に連れて行きなさい。彼女ならあとは上手くやってくれるはずだから」
「次の質問だ。証拠としての力を強めるとはどういうことだ?」
壮一の言葉を聞いて1人の少女が前に出てきた。
「私は、その人の言葉が嘘か本当かわかるです、これで商売してるです」
アリスの説明では、この子は"目"の力でそういった事ができるということだった。結婚式や商会の特に重要な契約の際に呼ばれて、その能力で金を稼ぐらしい。ただ、アリスが何かを含んだような目線を少女に向けたことが、壮一は気になったが。
「ともかくお嬢ちゃんたち、悪いがおじさんと、お姉さんの膝に座ってるあの小さなお姉さんと一緒に来てもらえるか?」
先ほどの少女は頷くが、他の2人はおどおどしたままだ。そこで壮一は安心させるためにも少し話すことにした。
「君たちに悪いことをした人に、悪いことをしたって言ってやりたいんだ。でもそのためには君たちが君たちのされたことを話す必要がある。可能な限りは守るから、一緒に来てもらえないかな」
「嘘は1つしか言ってないです。"可能な限り"は守るじゃなくて多分、"絶対"守るです」
そこで商売をしている少女が壮一に助け舟を出したのもあって、2人の少女は頷いた。
レイ「ところで私、いつまで座ってればいいんですか?」
アリス「私の気がすむまでね」なでなで
レイ「はわー…」
察しの良い方は気付いただろう