十一話
男達にカツアゲされそうになっていた女を助けた壮一はそこから去ろうとするが、そこで女が壮一を呼び止めた。
「今、指名手配されてるソーイチさん、ですよね?礼をしたいので、よかったら私の家で匿いましょうか?」
ありがたい誘いだった。しかし、出会ったばかりの犯罪者を匿うというのは信用ができない。壮一は断ろうと女に顔を向けると、女は言った。
「実は…、私も逃げてるんです。同じ逃亡者だから兵隊に差し出すなんてことはしませんよ?」
壮一の考えを読んだのか、女はそう言った。嘘ではないと考えた壮一は匿ってもらうことにした。
「それじゃ、頼む」
女の家は大通りからでは絶対にわからないような路地裏の奥にあった。壮一は路地裏に入っても、事前に情報がなければここまで来れないと感じた。ここなら隠れ家として最適だろう。
「さ、入ってください」
「邪魔するぜ」
壮一は女の家に入って気づく。
「逃げる準備万端、だな。これは」
それを聞いた女が驚いた様子を見せる。
「もしかして気付いたんですか?見つからないようにしてたつもりなんですけど…」
注意深く家の中を見ればわかるが、辺り一面に紐があり、他とは少し質感の違う床もある。紐は侵入者が踏んだりするとベルか何かが鳴るのだろう。床の下は逃走用の隠し通路に繋がっていると考えられる。
「もう少し細い糸にして、床はわからないように塗装でもすればいいだろう。俺は風間壮一だ」
「あとでそうしますね。あ、遅れました、私はアリス・エアストです」
お互いに自己紹介を済ませ、ようやく一息つく。そこでアリスが気になっていたのか、壮一の目を見つめながら尋ねた。
「指名手配の内容、本当なんですか?あなたが第一王女を殺したなんて思えないんですけど」
アリスは自分をわざわざ助けてくれた人物が指名手配犯となるようなことをするとは思えなかった。
「ああ…、本当は第一王女は生きてて、これは計画なんだよ。第二王子が隠したい物を見つけるためのな。俺も一枚噛んでる…ッ?!」
そこで壮一は気付く。
ーなんで俺はこんなぺらぺら喋ってるんだ?
「フフフ…、そうなんですね。もしかしたら私たち、出会うべくして出会ったのかも」
女は続けて言った。
「もしかしたら、私、その第二王子が隠したい物を知ってるかもしれませんよ?」
ーこの女、何者なんだ…?
感想や評価いただければありがたいです