帝国連続"奇"死事件
顔を真っ青にして涙なのか汗なのかわからない体液を垂れ流す少女が守衛の近くに現れた。
私だ。
「ゥ…おえええええええ!!!!」
「テメェ!毎日丁寧に磨いてる門をよおゴラァ!豚箱ぶちこむぞオラァ!!大丈夫か水飲めゴラァ!」
「ひぇぇ…怖すぎますっておえええ!」
守衛が怖すぎてまた吐いてしまった。いや仕方なくないですか?そりゃ吐きますって。
「おいガチでよ、何があったってんだよ!」
息を整えて一言。
「あのー、私、海部ひまりというんですけど。もしかしてここにウンベヒマリさんという方来てないですか?」
全然一言じゃなかった。
守衛さんについてきて、ひとまず一息つける場所にたどり着いた。人のいる場所は何ヶ月ぶりだったかな。
「で、ウンベヒマリさんよお!ウンベヒマリさんがいらしてませんか、だと!貴様ア!この俺が守衛だからと舐めているのか!貴様らはいつだってそうだ!転移者というのはいつもいつも、ふざけやがって!」
「訳わかんないですよねえ。というのも実は私、転移者でしてえ、あのあれですよ。私じゃない人が私のフリしてるんですよ。あと他の転移者がすみませんでした。」
守衛さんはそこでようやくわかったぞ!というような表情になっていた。たしかに深夜あの状態の長髪の女が現れてこんなこと言ってきても、化け物がなんか言ってるくらいにしかならないだろう。
そこへ大きな足音が近づいてきて、扉が外から蹴り開けられた。
「ボス!殺人事件です!現場付近で黒髪に長髪、転移者らしき服装の不審な激ヤバ女が目撃されているそうです。ちなみにその女はボスの女ですか?」
嘘でしょ!
「現場まで案内しろ!殺人犯の女!初デート先は…現場だ!」
嘘でしょ!
ところかわってデート先の宮殿。場違い感が半端ない殺人犯と守衛のコンビがやってきた。いや別に殺人犯と守衛が宮殿にいるのは場違いでもなんでもない。私たちが個人的に場違いなだけだ。
「殺人犯の女を連れてきたぞピュイサンス!」
「いや私違います。というか死体も何もないじゃないですか」
「なんでも、殺人犯にしたがるね。カーネイジ。私は、窃盗と言ったはずですよ」