交点
館の一階、食卓にて4人が集まり、そのうちの2人が目線の高さを合わせて話していた。
「上を見回ってたらこの子がいた…と。えーと、キミのお名前はなんて言うのかな?」
「宇多野凛…」
「ウタノリンちゃんって言うんだね。ウタノちゃんはどうしてここにいるの?」
「…えぐ…っ…、ぐす…」
「あーあ、探偵が泣かせちゃったー」
「うわあ!ごめんごめん。こ、これ!飴とかいる?」
「…いる」
カオルはリンと名乗る子どもの相手に悪戦苦闘していた。友達の弟や妹と関わることが多く、子どもの相手には慣れている自負が彼女にはあった。しかし、肉親と一緒にいる子どもと話すならまだしも、1人残された子どもと話すのは全く別の次元のことだった。早々に質問を取りやめることにし、なぜリンという少女がここにいたのかを推測する。
「もしかして、ここに住んでるの?」
「…うん」
「てことはもしかして…、ウタノさんがここの大家さん…でしょうか?」
「うん」
「海部さん、じゃあ後は頼むよ」
「こんなの聴いてないんだけどな。ま、いっか。今日からこちらでお世話になります。私が海部陽葵、あっちの冴えないヒョロイ奴が白雪薫、ブリリアントカットされたダイヤのように輝く顔に、見る者を引き込むような深い黒い目の人が赤城双葉っす。これからどうぞよろしくお願いします」
「えっと、じゃあ、私は外の小屋にいるから、用があったら来てね」
そう言って佇む少女には、妙な圧力があった。何かを求められている、ヒナはそう思った。だが、何を求められているのかはわからない。カオルとフタバは既に二階に上がり、探偵に頼ることはできない。そうやって悩んでいると、手を握られた。
「海部さんって、お姉ちゃんか妹、いる?」
「…え?姉ならいますけど。何かあるの?」
「…びんご」
「何か言いました?」
少女は相変わらず妙な圧力を体に纏ったまま、目線を左に向けて何か考える素振りをみせる。それから玄関の方に歩いていき、彼女はドアを開けたところでようやく答えた。
「…妹って感じがしたから、私のことお姉ちゃんと思っていいよ」