拠点
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いいたします。
「会長、カオル。ヒナが物件を探してきたよー、一緒に行こう」
「ヒナヒナは流石、仕事が早いですね」
3人は、エルフの森に行く前に情報収集をすることにした。その前に帝国を拠点にすることにし、借りることのできる家を探していたのだった。当分、あるいはいつまでも異世界にいることになると、カオルは予想していたからだ。
ー元の世界に帰る手がかりは全くない。こっちに呼んだ神国に何かあるかもだけど、今は元の世界の人と接触して情報が欲しい。
カオルが考え事をしていると、ヒナに背中を叩かれた。物件についたらしく、目の前には立派な豪邸があった。
「却下」
「なぜですか、カオル。こんな立派な家、あちらでは住めませんよ」
「そうだそうだ。もっと言ってやってくだせえ会長」
たしかに立派だ。あちらでは、金があったとしても建てる土地がない。こんな豪邸に住む機会はないだろう。それをカオルは認めていた。しかし、カオルにとってはそれより気懸りなことがあった。
「絶対出るじゃん…ここ」
「た…探偵!?オマエそういうキャラじゃないだろ!」
そう、カオルはお化けが苦手だった。オカルト映画は観ないうえ、ホラー映画を観る際にも、オカルトの気配がないか十分に調べてから観る。それに、夜、1人で寝られるようになったのは高校に入ってからだった程だ。しかし、明かりをつけた部屋でなら寝られるだけであり、暗い部屋で寝るのは無理だった。それくらいには、彼女はお化けが苦手だ。
「…なるほど。そういうことでしたか。でも、ボクが付いてますから、安心してください」
抱き合う2人を、生暖かい目で見つめるヒナであった。
その後契約を済ませ、家に入った3人が思ったのは奇しくも全く同じことだった。
「探偵ごめん、確かにでるかも…」
「自分、外の物置で寝るから。気にしないで」
その家の中は、綺麗ではあるものの、出そうだった。いかにもな洋風の内装、使い込まれたアンティークの家具、それらがオカルトの舞台になりそうな家の雰囲気を醸し出していた。
にわかに怯える2人だったが、1人は違った。フタバは臆せず家の探索を始めたのだった。
2階に上がり、一通りの部屋を見て回ったフタバには気になることが2つあった。
「…妙ですね。綺麗すぎる。管理者が手を入れていたにしろ、ここまで綺麗にするものなのでしょうか。まるで、さっきピカピカにしたみたいな…」
1つは、綺麗すぎること。綺麗な分には構わないが、明らかに入った人の手が嫌に気になった。
「それに、息遣いが聞こえてるんですよ…そこッ!…あれ?」
フタバが開けたクローゼットの中には、誰もいなかった。のではなく、その正体が予想だにしないものだった。
「…子供?」
「お姉さん、だれ?」