表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界子守道中  作者: トライド
暁明の向こう〜豊穣の森〜
112/122

反撃

「困ったことになっちまいましたね。会長」


「333号室は後回しにして、まずは地下のホールへ」


「暗渠のさらに地下って…深すぎて嫌だー!」


「まあまあそう言わずに、頼りにしてますよ」


「か、会長…ヒナに任せてくだせえ!」


 カオルのコールを受け取り、オリエントホテルにたどり着いた二人だったが、そこにコールの主はいなかった。代わりに二人を待ち構えるようにホテルのロビーに集まっていた大勢と、二人でお話しをしていたのだった。


「こいつらが言うには、今頃地下でお楽しみだってことです。早く行かなきゃです。それにしても…、ゲスが」


「ヒナヒナ、カオルはのらりくらりとかわしてるでしょうし、のんびり行きましょう」


「意外と余裕ですね?こんなこと言ったらいけないかもですけど、もっと取り乱してわーってなるかと思ってました」


「…目に見えるものは、心配してしまうんです」


「え?」


 独り言のように呟かれたそれは、ヒナには届かなかった。


 扉が勢いよく開け放たれ、闖入者とゴロツキたちの目が一斉に合う。ゴロツキの一人が闖入者、フタバとヒナに近づき、何者かと問おうとしたところで、天井に人間が刺さった。


「この方が目に入らぬか!この方こそ、赤城会会長その人、赤城双葉であるぞお!?」


「知らんわきさんら!おい!このガキども簀巻きにしてエルラックに沈めたれや!」


 謎の勢いのまま、地下のホールでエセ世直し一行とマフィアの戦いが始まる。


「オウごらあ舐めんなあガキだとか抜かしやがってよお!」


「間延びしてあまり決まってませんよ、ヒナヒナ…」


 腰が引けた姿勢で、銃を滅茶苦茶に撃ちまくるヒナは、これでもかと言うほどに格好悪い。しかもその弾丸は、不思議と誰にも当たらなかった。


「乱射魔のガキは…仕方ねえ!お前らは隠れてろ!俺が二人とも絞める、まずは馬鹿力のガキだ!」


 ホール中のゴロツキたちが息を合わせて「おす」と叫ぶ。その気迫に一瞬怯んだフタバの隙を見逃す程、ゴロツキのリーダーは甘くなかった。


「どたまかち割ったんぞゴラァ!」


「っク、させません!」


 リーダーの渾身の踵落としをなんとか両腕をクロスさせてガードするも、その両腕にはかつてない負荷がかかった。


「これだから、魔力ってやつはあ…!好きになれないんですよ!」


「あア!?なんつったよガキ!」


 防戦一方に追い込まれ、壁際に追い込まれていく。尋常ならざる力のぶつかり合いの中で、フタバは直感で、自身の敗北を知った。最初の踵落としを、全く勢いを殺せず両腕で受けたうえに、その後も暴力にさらされ続けたフタバの体は、実際のところ限界に近かった。


「これで終いじゃ死ねや!」


 両腕が、骨をなくしたかのように垂れ下がり、フタバの体が大きな的となる。トドメとなる一撃が、無防備な体に放たれた、まさにその時、誰かが笑い、誰かが悲鳴を上げた。


「どうですか、ボクの、石頭は。あなたの敗因は、頭を使わせる隙を与えたことです」


 その少し前、地下では玉虫色のボールから光が撒き散らされ、妖しく少女が踊っていた。


「ブハハハっ!いいぞいいぞ!見たことねえダンスだ!もっとだ!」


 妖しい踊り、ではなく不審者のような怪しい動きだった。カオルが地下に力づくで連れてこられてから、その実、痛い目には遭わされていなかった。しかし、多少痛い目に遭わされた方がマシだったのではないかと思う程に、恥の上塗りをさせられていた。ことの始まりは、カオルが時間稼ぎに自身の特技を紹介したことだった。


「そうそう自分、ダンス得意なんですよね。皆さんもダンスはやったりしますか?」


「あ?まあそうだな。やってみろよカオル」


 すっかり気を許してしまったチンピラは、カオルにダンスを始めさせてしまった。それがカオルの悪夢の始まりだった。


「なんだよヒトデみたいにグニャウニャと動きやがってよ!打ち上げられたクラゲみたいにのたうちまわってんじゃねーぞガハハハハ!」


 カオルのダンスは酷かった。まるで特技とは思えないものだった。それを、初めて知ることになったカオルだが、プライドのために、ダンスをやめられなかった。何とかダンスを1セット終わらせ、スタッフルームからホールに入ったカオルの目に映ったのは、ゴロツキの頭に頭突きして地面に打ち込む恐怖のパイルドライバー女と、無限マガジン遮二無二乱射魔シーンだった。


「どうなってんの…?これ…?」


「どういう状況だこりゃ?」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ