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異世界子守道中  作者: トライド
暁明の向こう〜豊穣の森〜
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記録01_a

 様々な魔法設備、科学設備によって厳重に守られていた奥の部屋は、ソウイチの力のせいで、易々と俺たちの侵入を許してしまう。


 俺がその部屋に入って初めに思ったのは、清潔感のある部屋だ、ということ。次に、違和感を覚えた。なぜかはわからないが。


「この部屋、厳重に守られていたにしては、何もなさすぎる。からくり、とやらはあるようだが、それだけだ。ソウイチ、そろそろ種明かしをしてもらえないだろうか」


 そうか。ゴードンのおかげでわかった。違和感を覚えたのは、厳重に守られた部屋に、何もないからだ。


「俺も人に聞いてここに来ただけなんだが、ここは、昔の戦争の時に作られた研究所…、らしい。さっきの資料室の資料を読んだあんたらはもうわかってるだろうが、ロクでもない所だよ。サクリファイス…、洗脳魔法…、ネクロマンシー…、人の尊厳、命を貶める魔法を創り出していた。…まあ、ここに、役に立つ魔法があるかも、なんて期待して来た俺も、ロクでもない奴なんだろうな…」


「ソウイチ、気にするな、です。ここは、外道を極めた奴らが集まっていた、ですが、同時に、天才が集まっていたともアナが言っていた、です。人を治すのに使える魔法がある可能性を否定できなかった、ですよ。それより、そのラップトップ。クロエが確認してみる、です」


 そう言ってクロエがカラクリ…ラップトップの前に立ち、文字が書かれた板をぱちぱちと指で叩き始めた。すると、部屋の奥の方の壁に映像が映し出される。ラップトップとは、魔力板とカラクリを合わせたもののようだ。


「…主に映像データと音声データが記録されてる、です。文書データもあるよう、ですが…」


「とりあえず、この記録01_aというものから、観させてもらえるかしら?」


 クロエが頷き、カラクリを叩くと、黒髪の、東方の国の人間が椅子に座っている姿が映し出された。


「黒田…?」


 黒田とは誰だろうか、ソウイチの知り合いなのか?


「黒田千鶴、15歳っす。まあ、大抵の武器は扱えるっすね。それにしても、なんでこんな陰気な場所に連れてきたっすかアナさん?…ここなら、確かに盗聴のリスクはなさそうっすね。で、こちらに来た経緯っすか。教室の床が光って、その次にはジンパクの教皇様の前、異世界に来てた…らしいっす。千鶴は居眠りしてたっすから、後から聞いただけっすけどね。教皇様は魔王を倒せ、とか言っていた記憶があるっす。…その話は後?教室で居眠りする前、誰が教室にいたかっすか?ええと、休みの人はいなかったはずだから、千鶴のクラスの全員…名前覚えてないっすから、詳しくはおしえらんないっす。…、30人っすね。先生…?いや、先生はいなかったっすよ。

 なんせ、自習だったっすから」


 異世界、30人、ジンパク、教皇…情報が薄いようで、濃い。たしかに、この黒田という少女は自身のクラスについて位しか話していない。しかし、異世界召喚、ジンパクの教皇がそれを行なっていたという事実をこの話から読み取れる。加えて、異世界召喚などという大戦以前を語る伝承でしか語られない魔法を、ジンパクは可能としていた、ということもだ。異世界召喚は現実的に不可能とされている。魔力コストがかかりすぎるからだ。たった1人召喚するだけでも、多大な犠牲を払うことになり、それを行ったとしても、成功する保証はない。


 それを、30人分。どのようにしてそれを可能にしたのか。


「なるほどね。サクリファイス…犠牲を払えば、あらゆることを可能にする魔法を…、異世界召喚という魔法に応用したのよ」


「何だと!?」


 つい、叫んでしまった。狭い部屋に響き、皆に睨まれてしまう。さらに、皆はその結論に辿り着いていたらしく、クロエに至っては、明らかにバカを見る目だ。


「それはよ、つまりこういうことだな?ここは、かなり年季の入った施設だ。明らかに、大戦以前。どうにかして、ジンパクにここの情報が行き渡り、サクリファイスだけか…あるいは全部、世に解き放たれたっつー」


 ハルの考えは、最悪のものだった。しかし、この記録を信用するならば、黒田という少女の話が真実ならば、少なくともジンパクには、サクリファイスを発動させるための理論が確立していることになる。


「最近、新種や、魔族…、妙な事件が相次いでるのは、ここが原因だったのかもしれませんわね…」

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