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飛翔の楕円球  作者: 西武球場亭内野指定席
10/11

第九話

前回のあらすじ

合同合宿中の港南埼玉ラグビー部に届いた練習試合の挑戦状。

相手は北陸の雄、石川の加越学園高校。

相手に不足なしと意気込む部員たちと、一抹の不安を抱く源田をよそに、試合が始まろうとしていた。


今日の練習試合はこの2試合

第1試合は港南千葉対加越学園

第2試合は港南埼玉対加越学園

本当は第3試合で港南千葉対港南埼玉の試合をやるはずだったが、港南千葉側がスケジュールの都合で午前中には終わらせないといけないため、このようなスケジュールとなった。

このスケジュールは加越学園の猪俣監督も了解した。


第1試合は午前9時キックオフ。

第2試合は午前10時半キックオフ。


「相手は1試合ずつなのに俺らは2試合連続かよ」

「俺らの前に去年の千葉の代表校を戦わせるとか流石策士源田監督、汚いな」


こうして、曇天の中第1試合が始まった。

赤に黒ラインのユニフォームの加越学園と、黄色と緑のゼブラのいわゆる菜の花ユニフォームの港南千葉の戦い。

トンガ人留学生とニュージーランド留学歴のある帰国子女の計4人の3年生を軸とした港南千葉の激しい攻めの前に、加越学園が真っ向勝負で挑む構図である。

加越学園は全国トップクラスのディフェンスで食い止め、失点を許さない。

一方の港南千葉も、伝統のパワーディフェンスで食い止め、こちらも失点を許さない。


前半28分

加越学園、10番の室井がドロップゴールを狙うが、クロスバーに当たり失敗。

港南千葉、12番の諸井がこぼれ球を拾ってリターンを狙うが、加越学園のご自慢のディフェンスで食い止める。


結局どちらも点を取れずに前半終了。


後半も全くヤマが無く、淡々と進んでいった。

25分に、加越学園は敵陣残り3Mまで進むも、トライをしようとしたところでノックオンという痛恨のミス。

これが響き、加越学園は防戦一方となった。


結局、0対0の引き分け。


島岡は源田と話をしていた。

「源田、すまない。引き分けにしかできなくて」

「十分です。今度は、全国大会で会いましょう」

「期待してるぞ」

そういうと島岡ら港南千葉の面々は帰っていった。





そして、第2試合

港南埼玉は緑のジャージを着用。

スターティングメンバーは

1番 藤岡

2番 矢部

3番 宇野

4番 奥田

5番 大村

6番 桑田

7番 三浦

8番 北山

9番 板橋

10番 石原

11番 吉野

12番 中島

13番 山内

14番 中尾

15番 武田

控えは

16番 大河内

17番 ゴメス

18番 井藤

19番 岩橋

20番 宮前

21番 上杉

22番 川中

23番 川本

24番 岡島

25番 武藤


AM 10:30

少し雲が薄くなり、加越学園のキックオフでゲームが始まる。

しかし、ボールが直接タッチラインを割ったため、センタースクラム。

港南埼玉はここでハイパントのサイン。

10番の石原、迷わずにハイパントを蹴る。

高々と上がったボールの制空権を北山と山内が競りに行く。

ボールは加越学園に渡ったかに見えた。

しかし、加越学園はここで痛恨のノックオン。

そのボールを三浦が取ったためアドバンテージ。

ラックののち、加越学園のノックオンの反則によるスクラムとなった。

スクラムは互角。

最重量級の宇野のおかげである。


そこからいつものパターン通り、ウイングまで展開するも、相手のディフェンスに阻まれ、前に進むことができない。


前半15分

加越学園ボールでのスクラム

加越学園、ここで不覚にもスクラムを崩しコラプシングの反則。

ここで港南埼玉はペナルティーゴールを狙う。

キッカーは石原。

距離は約40m。


ショットは決まらず、ボールがトライゾーンの外に出たためドロップアウトに変わる。


その後、港南埼玉は攻め手を欠き、点が取れない。

一方の加越もスタンドオフのインサイドアタックをことごとく桑田と三浦の両フランカーが止めるため、攻め手を欠く。


そして、ハーフタイムに入る。

「相手が執拗にインサイドアタックを繰り返してくれて良かった。ただ、後半からはそううまくはいかんだろうな」

と、北山。

「ということはバックスだな。一気に畳みかけよう」

と、石原。


後半開始

選手交代

13番山内→21番上杉


ここで右ウイングのポジションに上杉が入り、右センターのポジションに中尾が入る。


雲が厚くなってきた後半もなお、どちらも攻め手を欠く展開となった。


後半15分

加越陣内22Mライン付近での港南ボールのスクラム。

ここで板橋がサインを出す。

サインは8-9(ハチキュウ)からのフルバックの中央突破。


8-9とは、ナンバーエイトが飛び出し、スクラムハーフにパスを出して展開する技である。


サイン通り、北山が飛び出して板橋にパスを出す。

インサイドアタックと思った加越の陣形が乱れたのを、石原は見逃さなかった。

板橋からパスを取った石原は飛ばしパスで武田にパスを出す。

「(石原!ナイスパスだ!)」

スピードが乗った武田の中央突破に、さしもの加越学園のディフェンスも歯が立たず、トライを許した。


そして、コンバージョンキックも成功した。


港南埼玉 7 - 0 加越学園


後半20分

加越陣内7Mでのスクラム。

ここで加越は痛恨のミス。ボールを取られてしまう。

そのミスを北山は見逃さず、素早くボールを取り、スクランブル攻撃を見せる。

加越ディフェンス陣はなんとか北山を食い止めるも、インゴールラインまではあと少し。

インゴールラインやポールカバーにボールをグランディングしてもトライが認められる。

そこから懸命な攻防が続いた。

食い止める加越ディフェンス陣と、北山らフォワード陣。時間は残り5分を切っていた。

ここでトライを奪えばよっぽどのことがない限りまず逆転はされない。

一方、とにかくボールを奪い、同点に追いつきたい加越。

しかしここで加越は痛恨のペナルティ。オフサイドの反則を犯してしまう。だが、ボールは港南埼玉の矢部が持っていたためアドバンテージ。そのままモールで押し込む。

バックスも参戦して懸命に押し込み、トライを奪った。

そして、コンバージョンキックも成功した。


港南埼玉 14 - 0 加越学園



2分後

港南埼玉の中島の蹴ったボールがタッチラインを割って、プレーが止まる。ここで試合終了。


ラグビーではどんなに恨んでいようと終わってしまえばノーサイド。

源田監督も加越学園の猪俣監督に謝り、この遺恨試合にも幕が落とされた。


合宿は無事終了。このわずか数日後にはU-17日本代表合宿が行われた。石原、三浦、北山の3人はそこで頭角を現し、全国に知れ渡ることとなった。特に、代表合宿最終日に行われたウェールズとの親善試合で2トライを挙げた北山の存在は記者団を釘付けにした。


4日間に渡って行われた菅平キャンプではU-17日本代表の3人にマークが集中したが、それを逆手に取ったウイングへの飛ばしパスやフルバックの中央突破の作戦が見事にハマり、連戦連勝を重ねることとなった。

これには相手校の監督も「このチームには隙が無さすぎる。花園では当たりたくないなぁ」と、弱気のコメントを残した。


夏休みが終わり、9月になると大会が始まる。

港南埼玉はAシードなので3回戦からの参加となる。

今年もまた北埼高校が出るのか、あるいは港南埼玉高校が勝つのか。それは神のみぞ知る。



つづく

しばらく更新ができず、ご迷惑をおかけしました。


次回の更新は未定です。

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