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子どものいる風景 ~先生の弟?~

作者: 成井隆

 休み時間だった。休み時間が終わって車の近くに子どもたちがいなくなったら出かけようと思っていた。

 いつでも出られるように、後部ドアを開けて出張に持って行く書類を座席に積み込んでいた。     

 そんな私の行動を見ていたのだろうか。近くで遊んでいた一年生の男の子が近づいて来た。

「これ、校長先生の車?」

「そうだよ」

「中を見ていい?」と言うあどけない笑顔に、

「どうぞ」と、私もにこやかに応える。


 その子は車の中を物珍しそうに眺め回した。そして、

「校長先生、弟いるの?」

と訊いてきた。

 質問の意味を、私は咄嗟には理解し得なかった。

 けれど、その子が見つめているものが後部座席に固定してあるチャイルドシートであることから、理由が分かった。

 シートは、時々使う必要から一年ほど前に取り付けたものだ。

 その子の家の車にもチャイルドシートが備え付けてあるのだろう。そして、家族で出かけるとき、そのシートには可愛い弟が座っているに違いない。そこからの連想で、<弟いるの?>の質問になったのだ。

 弟思いの、優しいお兄ちゃんであることが十分うかがえた。

「うん・・」と、私は、何とも曖昧な返事を返した。

 確かに私にも弟がいる。五十を過ぎた弟が二人。

 

      ・・・・・       


 現役を退いてもう何年も経つ。けれど、当時の子どもたちとのやりとりや、その時の感動は、今でも鮮明によみがえる。

 二人の弟のうち、一人は数年前に病で亡くなった。

   


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