ラスボス感
「あらためて話し合おうか」
書記長が床に転がったまま話を続ける。
「その前に起きたらどうだ」
「願いを言え」
「なぜだ」
なぜかは分かっている。微妙な角度で転がってしまい、うつ伏せ状態だ。
動けまい。
「願いを言ったら光るし飛ぶね、なら大事な時にしか言わないことにする」
「願いを……言え」
「聞こえないなぁ」
「願いを、言え」
「さぁみんな、ここから出ようか」
「待ってください」
「なんだい?」
「お願いします、願いを……」
「それがものの頼み方……て、動けないのか」
「もう光りません、飛びません……」
仕方ない、起こしてやるか。
手で持ち上げてやった。
「ありがとうございます……チッ」
舌打ちが聞こえたのは気のせいか。
こいつには気をつけなければならない。
わらわらと人形達が首相官邸のあの広さの階段をスーッと浮きながら上がっていく。
なぜ書記長はこれをしなかったんだ……呆れた。
と、思ったところで気がついた。
結構な数で集まると、こちらから見分けがつかない。
「なぁ、書記長どこだ?」
ピクリと人形達が止まる。
四方八方そこらじゅうのヤツらが、くるりとこっちを見た。
カタカタカタカタと動いた。
気持ちわりぃ……
「ここだ、ふはは」
わからない。
「私は補佐で……す、です、だ」
キャラを掴みとれよ、頑張れ補佐。
「私は……えーと」
合鍵は手を挙げた。
ひとまずは書記長が厄介だ。
「願いを言うか?ん?」
もしかしてこいつ、さっき転んだまま起きなかった理由……
まんまと引っかかるところだった。
なぜもそんなに光って飛びたがるんだ。
「分かったよ、願いだ、お前ら、書記長、補佐、合鍵の3体だけでも、わかりやすくしてくれ」
すると、3体の人形が光った。
そこで、呪文いらねぇのと、こちらの意図が伝わらないのも分かった。
いや、願いもくそもなく、光りたいだけのか。
《ナンデヤネーンノ……》
書記長が呪文を遮る。
「そんなもの、必要ない、むしろ恥ずかしいと思わんかね」
カタカタ震えながら発光体が空を飛んだ。
「ナンデヤネーンノーナンデヤネーンノーて、ブッ、クスクス」
書記長め……