落とし穴
「願いは……」
あー……
気づいた。
私は気づいた。
合鍵のアイツと、
会話してたやんけ。
「願いは無い!」
やられた!
この場に引きずり出された。
1000体と1人じゃ分が悪いとかでは無い。
主権が持っていかれる。
その第1歩になりかねない。
何でも良い、何かしなければ!
やはり、すぐさま唱えた。
《ナンデヤネーンノ、ピラルクオイシー》
プロジェクターに文字が浮かぶ。
【願いを言えwww】
馬鹿にしやがって……
ヤケクソだ。
「ここにいるお前とお前!会話できるようにしろ!」
書記長と補佐を指さした。
おずおずと正面の合鍵が聞いてきた。
「私は?」
「お前は元からだろうが!」
「バレてたの!?」
唖然とする私を差し置いて……
【願いは叶えた……】
……ピカッ!相変わらずまぶしい!
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ……
私の至福のひと時を過ごす空間は何故か、キズ一つ、つかなかった。
そして、床に転がった書記長が話しかけてきた。
書記長「やぁ、君の意見を聞こうじゃないか」
思ったよりはるか上からの目線だ。
しかし、あきらかに、あきらかで、あきらかだ。
私は訊ねた。
「なぁ、その前に確認だ、この部屋の外の奴らは光っても飛んでもなかったようだぞ」
しばしの沈黙。
「ふん、証明し……」
「見ろ、来客があった時などに、ここに端末が……」
コツコツ、と、スマホで机を軽く叩いた。
再び、少しの沈黙。
ガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッガッ……
遅いわ。
そして横に目をやる。
「盗ろうとしてんじゃねぇ」
補佐は黙って引き返した。