うらやましい
ピンポーン。
チャイムの音。
ピザ屋だ。
5人。
しょきこ、ほさこ、あいかぎは、初めての香ばしいチーズの香りを鼻から全身へと運んでいた。
「パーティですか?良いですね」
と2、30万の会計を済ませる。
4人でテーブルに座り、しょきこが無駄に頼んだ50枚のLサイズのピザを見る。
なぜパワポが使えてピザの注文ができないのか。
勿体ない事この上ない。
「さて、金は構わないんだが、この量を誰が食う」
しょきこが急に手をあげる。
そして次々と。
「わたし」しょきこ
「わたしが」ほさこ
「わたしがー♪」あいかぎ
「ぜよ」ほさこ
3人がこちらを、じっと見る。
無言の圧力に負けてなるものか。
「ちゃんと仲良く分けて食えよ」
チッと舌打ちが聞こえた。
実は、先ほどから無視していたのだが、足元でガタガタと人形たちが動いている。
人間になった3人が相当にうらやましいらしく、手を上げては、どうぞどうぞと言わんばかりの動きを見せている。
それを見ていたあいかぎが、サラミを床へ投げる。
ガサガサガコガコガンガン……
犬か。
そもそも、食えるわけがなかろう。
人形たちが散開したあと、また足元に目をやると、サラミは無くなっていた。
かなりのオカルト現象だ。さすが呪われた人形。
引きつった顔を元に戻しながら頭を起こす。
ほさこが、ペッ、ペッと何か口から出そうとしていた。
指で何かを引っ張り出す。
髪の毛が出た。
サラミを食ったのはこいつと信じたい。
口元が脂ぎった数体の人形はすでに視界から消えていた。
私の気持ちも関係なく、やつら3人で、ピザをちぎっては投げ、ちぎっては投げ、犬のエサやり状態。
結局こいつらが食っていたようだ。
50枚のピザはあっという間に消えた。
いろいろと怖いわ。
まずは、「人間の普通の生活」を教えなければ行けないのかもしれない。
育成ゲームか、あほらしい……。
でも、やはり見た目はかわいい。
悔しいけれど、ピザの箱を1人で黙々とゴミ袋に入れた。