1000の呪われしドール
私の名前は
五十嵐 ほんま
スペックは 28歳 独身。
合コンでは2番手位置のルックス。
よく聞かれるが、ほんま、は本名だ。
あと、なんていうか、超金持ちだ。
やる気があれば、大手企業を個人で買える。
ひいおじいちゃん、祖父母、親兄弟、親戚縁者、みんながみんな、まとめて死んだ。貸切バス旅行で、ふぁー!と。
だから遺産が、がぼがぼヒャッハー!
てなわけではない。
アホみたいに膨大な遺品を整理しているうちに、謎の古文書やら、いくつかの山の所有権など、諸々出てきたので、処分せずにきちんとまとめてみた。
そして、私はひとつの結論に達した。
願いが叶ってしまう系の、あれがある。
集めたのよ、全て揃うと願いが叶うあれを。
ひいおじいちゃんが買い占めた、とある山々に埋められた、1000体の呪われた市松人形。
あれ、とはその人形だ。で、オプションとして、呪われたやつ。
大変だった。
なぜか1000体以上はあったので、どれが呪われているのかわからず、除霊師みたいのに鑑別を頼んだ。
除霊師は、ひよこのオスメスをわける達人の速さでひょいひょいと呪われたのと、ただの人形と、を分けた。
そして、こう言った。
「わかんねぇです」
落胆して持ち帰り、部屋にたくさんのダンボール箱が積み上がっただけだった。
翌日。
ダンボール箱から、全部の人形が消えていて、ベランダで日光浴をしていた。
なぁんだ、狭いところは嫌いなのか。
……
あかんヤツや、髪伸びるのじゃない、動きよる。
あ、お前、合鍵作ろうとすんな。
髪なっが、お前ら、長っ!
あぁ、お前だけ電池式か。
なんで英語しゃべってんだよ。話しかけんな!
散髪すんなや!そして順番に並ぶな!
風呂に入るな、浮いてるのと沈んでるのは何の差だよ!
あ、屋台だ……、じゃねぇし!イカの人気高いわ!
……!
……!
……!
シュレックじゃねぇよ!
角野卓造じゃねぇよ!
もう、ツッコミ疲れた。
こんなことをしている場合じゃない。
とりあえず、短い巻物にあった呪文を唱えてみた。
「ナンデヤネーンノ、ピラルクオイシー」
すると、1000体(以上)の市松人形が、1つの小さいニワトリの生首になった。
ニワトリと関連性あんの?
私の疑問を食い気味に、ニワトリは発した。
【願いを言え】
単純なお願いをしてみた。しかし、これが人の性。
「金持ちになりたい、わりと上級の」
【うん、いいよ】
友達みたいに返事をしてくれた。
そして、ニワトリは、巨大なカバの首に変わり、あんぐり口を開けた。
その口の中……
「宝石箱や!」
おいおい、何億だよ……これ……
カバは、顔をしかめて、
「おろろろろろろ」
大量の宝石をゲロみたいに吐いた。
「えぐっ、ぐっ、おぉふっ」
もう出ないのに吐いている。
なんか悲しい。
そして。
カバは、ニワトリに戻り、その生首は光を放つと、頭上で無数の人形となり、ほうぼうに散った。
だが、それらは部屋の壁や窓にガツガツあたって、また1000体(以上)の市松人形が部屋を徘徊し始めた。
あれ、これ、なんか、違くね?
一回でしょ?一回だよね?
いやいや、まさか。
えーと……、どうしよ。
私は再び唱えた。
《ナンデヤネーンノ、ピラルクオイシー》