ごきげんな少女
とても短いので、さくっと読めると思います。
玄関の引き戸をカラカラと軽やかに開け、鼻歌まじりに帰宅する一人の少女。
歳は十になるかならないか。サラサラの綺麗な黒いおかっぱの髪。前髪で隠れてよく見えないが、顔を上げるとこぼれ落ちそうなくらいの大きな瞳は、目が合った者を魅了させずにはいられない。とても将来が楽しみな少女である。
彼女は家に入ると、鼻歌を歌いながら奥の自室の襖を開ける。
「ふふ…今日はとても良いものが手に入ったの。」
そう言いながら少女は持っていた荷をあさり、十数もの「作品」をずらりと並べた棚に新しい「それ」を並べると、しばらくうっとり観賞していた。
人間の首を。
新しいだけあって、まだ温かそうな肌。少し濁りかけた瞳。その全体の表情は恐怖で引きつっている。
「ねえ、素敵だと思わない?お母様…」
そう言い、満面の笑顔で娘は私を見た。
私は可愛いはずの娘が恐ろしくてたまらなかった。初めは何かの冗談で拾いでもしたのかと思っていたが、日に日に増える首を見て、これは娘自身が作り上げた「作品」なのだと気付いてしまった。
どうしてこうなってしまったのだろう、いつから娘は人を殺める事に抵抗がなくなってしまったのだろう。どうして………。
「ねぇ、お母様。今日遊んでくれた人はお父様にとても似ているのよ。」
屈託のない笑顔を私に向ける。目が合い、娘ははっとする。
「あ、そこからだと何も見えないね……はい、お母様。」
そう言うと新しい首の髪の毛を手でつかみ、私に見えるように掲げる。
確かに私が愛したその人に似ていた。
「でもやっぱりお父様の方が素敵。」
言いながら娘は奥にあった首をつかみ、新しい首と並べて私に見せた。
真っ白に濁りきった瞳。肌は青白く、完全に血の気が引いている。その表情は娘が綺麗に整え、まるで笑っているかのようだ。
私は悲しみで涙を流す事も、恐怖で声を上げる事も、娘に人を殺めてはいけないと叱る事もできないでいた。
なぜなら私も、彼女の「作品」のひとつであるから。
ホントにすごく短くてすみません(汗)