是非を問おう、その拳で
善神のタクシィとメトレィオヴロン、悪神のアパテイ、リモス、タナトスは交戦しようとしていた。
その場にいる全員が構える。
一番最初に動いたのは、メトレィオヴロンだ
メトレィオヴロンは何かをアパテイ、リモス、タナトスに取り付けた。
「死ね」
タナトスはメトレィオヴロンにそう告げると同時に、自らが待つ大鎌『存在を刈り取る湾内刀』で首と命を刈り取ろうとするが
メトレィオヴロンはひょいと避けてしまう。
「嘘……」
タナトスは無感情な顔のまま驚愕に満ちて目を見開く、あきらかに自分の力の入れぐあいと相手の避ける感覚が一致していなかったからだ。
「これは『神話神演』……恐らくはだが、その力を俺は渇望する、よこせ、ヨコセェエエ!! 」
リモスの『神話神演』である『泣き喚く騒乱童子』が発動する。
『泣き喚く騒乱童子』は欲しいと思った。ものを制限なくそのおもいの強さに比例して奪うもの。
「……!? なるほどでも、欲しければなんでも奪えるわけではありませんよ」
メトレィオヴロンは自身の力が奪われるという、感触に一瞬だけ驚いたものの、すぐに余裕を取り戻す。
メトレィオヴロンの『神話神演』はメトレィオヴロンに対し悪意を持てば持つほどその者の力が失われていく『重すぎる哲製の首輪』により、リモスの奪いたいという悪意に応じて、『泣き喚く騒乱童子』の力は弱まっていく
「はあ……はあ……ならもっと欲しがればいい」
リモス欲しいという想いに応えて『泣き喚く騒乱童子』を強くなるが
「諦めなさい」
『重すぎる哲製の首輪』はリモスの欲しいという想いに応えて『泣き喚く騒乱童子』を弱くする。
『泣き喚く騒乱童子』が強くなればなるほど『重すぎる哲製の首輪』も強くなり『泣き喚く騒乱童子』を弱くする。
メトレィオヴロンとリモスの『神話神演』は自身の決して届くことのない尻尾を追い掛け回す犬のように不毛な争いが繰り広げられ、完全に硬直する。
「手伝ってあげるよ……」
タクシィは手をリモスの方へ向けると
「やれせない」
タナトスが絶体絶命の大鎌をタクシィに向けて振り下ろす。
「君からかな」
タクシィはそう言ってタナトスに手を向ける
「……! 」
咄嗟に身の危険を感じたタナトスは大鎌を盾のように置く
タクシィの手から放たれたものをタナトスの『存在を刈り取る湾内刀』は殺すが殺しきれずに、タナトスの片腕が消し去られてしまう。
「殺しきれなかった……」
タナトスは驚きながらも、自身の傷口と痛みを殺す。
「フフ……残念」
タクシィは陽気に嗤う
触れたものを、私が殺したくないと願ったもの以外を無条件で殺す『存在を刈り取る湾内刀』でも殺しきれないということは奴の『神話神演』も何かしらに無条件で作用させるもの……そういった無条件能力はぶつかり合えばお互い半分の効果しか発揮できない、しかし私は接近戦、奴は遠距離戦、この勝負完全に私が不利。
タナトスがそう考えた瞬間
いきなりアパテイはメトレィオヴロンの後ろに表れ、メトレィオヴロンの首をもぎ取った。
赤く鉄臭い液体を噴水のように撒き散らすメトレィオヴロンの体をタクシィは見た瞬間リモスとアパテイに手を向ける。
リモスとアパテイは消滅してしまう。
しかし、その隙にタナトスはタクシィを大鎌の射程範囲内に収める。
だが、タクシィは早くタナトスに手を向けてタナトスを消し去ってしまった。
「ふう……」
タクシィが安堵の息を漏らすと
「勝ったと思って油断しすぎだ」
アパテイがタクシィの首に触れる
アパテイは確かに消滅したアパテイ自身の『神話神演』である、自身の存在を自在に消したり、現れたりできる『色はないが華のある背景』によって。
完全に不意をつかれたタクシィが後ろに手を出すより、アパテイが首を捻り切るほうが早い。
アパテイは勝利を確信した笑みを浮かべる。
「勝ったと思って油断しすぎだ」
タクシィの背中から、タクシィの『神話神演』である『全ては一つになる』が放たれる。
『全ては一つになる』は触れたもの全てを無条件で消滅させる、無色透明の者を直線上に全身から投擲できる。
アパテイは消滅した。
「ふう……ここは、もう終わりだな」
そんな事を言っているタクシィの目にゾイ、イリニ、ラグニア、オクニリスが仲良く歩いている姿が映った。




