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第0話「転生についての契約書」

 初投稿です。よろしくお願いします。


 どうも灼夜≪しゃくや≫です。三寒四温と言いますが最近はやっと暖かくなってきました。このまま暖かくなって欲しいものです。

 では、どうぞ。

「白鷺君。ずっと好きでした!付き合ってください!」

 

 僕、白鷺修也≪しらさぎしゅうや≫は告白されていた。


 目の前には顔を赤らめた少女がいる。今時の女子高生にしては珍しく、化粧気のない素朴な感じの少女だ。逸脱して綺麗とは言えないが十分可愛い顔立ちをしている。身長も178センチメートルの僕に対してちょうど上目使いになる位だ。

 この子、結構モテるんじゃないだろうか?まあ、ふってしまうわけなんだが。


「ごめん。気持ちは嬉しいんだけど、今は誰とも付き合う気はないんだ。だからこの話は…。ごめん。」

「…い、いえ!こちらこそ。…こんな所に呼び出して、すみませんでした!」


 涙を流しながら、遠ざかっていく少女の背を見て罪悪感に苛≪さいな≫まれる。ふった本人が何を言ってるんだとは思うが…。しかし今月に入ってまだ二週間といったところなのだが、この気持ちを抱くのはもう5度目だ。単純計算ならもうあと5度経験することになる。…いや、さすがにそれは自惚れか。


「そんな顔するなら付き合ったら良かったじゃねえか、修也≪しゅうや≫。」


 そう声をかけて来たのは、茶髪にピアス、そしてカチューシャをした一目で分かるチャラそうな男だった。


「なんだ、恋≪れん≫か…。僕には僕の事情があるんだよ。それに恋、僕にそんなことを言う暇があったら、6人もいる彼女を一人に絞ったらどうだ。いや、むしろ出家してもっと謙虚になれ。その方が(男にとって)好感が持てるぞ。」

「男の好感なんて集めて何になるんだよ。それに6人じゃなくて13人だ。あと、多分俺が出家しても(規律)守らな過ぎてすぐ追い出されると思うぞ。坊主頭だって似合うし。」

「規律守らなかったらそんなんじゃすまないと思うけど…。てか13人ってなんだよ。いつか刺されるぞ。」

「いいんだよ。俺と付き合う時、初めに言ってあるから。周知の事実ってわけ。俺の名前だってそうだろ。恋≪こい≫多き男なんだよ。ていうか、俺に言わせてみればお前の方こそ顔の無駄遣いなんだよ。もっと遊べ。」

「意味分かんないよ…。それに恋って名前だって『一途な恋』って意味かもしれないだろ。」

「あ~、それはないない。俺の両親だって二人とも愛人いるし。」

「遺伝かよ…。ていうか僕、恋のそんな家族情報聞きたくなかったんだけど。」

「はは。そうか?」

「はぁ~。もういいよ。僕はそろそろ帰らないといけないし。」

「ん?もうそんな時間か。にしてもお前、いつもこの時間帯になると帰るけど何してんだよ。」

「ただのバイトだよ。」

「バイト~!?お前…、青春を軽く見過ぎだわ。あり得ないだろ。高二の夏にバイトなんて。それとも何か、そっち系の稼げるバイトか?」

「違うよ。てか何でもいいだろ。僕には僕の事情があるって言ってるだろ。じゃあ行くから。」

「そうかよ。じゃあな。……あ、ミサキちゃん?ごめんなんだけどさ、今日そっちいけなくなっちゃった。え?女?違う違う。ホントだって、ホント。ちゃんと埋め合わせはするからさ。うん、ありがと。じゃ、そういうことで。」


 最低なBGMを背に自転車でバイト先に向かう。あいつも別に悪い奴って訳じゃないんだけどな…。ちょっと自重が足りてないだけで。


 バイト先にはすぐに着いた。この店は常に賑わっており、今も自動ドアが開いた時の特徴的なメロディが聞こえてくる。今日は嬉しいことに店長さんが休みだったはずだ。


「あ、白鷺君今から?じゃあ僕ももう少し頑張ろうかな~」


 メガネを掛けたヒョロっとした男性がいた。店長だ。

 …シフトの入れ違いかよ。


◆ ◆ ◆ ◆


「ただいま。」


 錆びついた階段を上ってすぐにあるアパートの一室が僕の家だ。両親は多大な借金を残して他界し、一人っ子だった僕はこのアパートに一人で住んでいる。借金の返済に追われる中、唯一幸いだったのはこのアパートが両親の物だったことだ。

 薄暗い廊下を進んでボロボロの襖を開ける。部屋は七畳一間に小さなキッチンがついているだけの簡素なものだ。


「ん?」


 天井から垂らされた白熱灯を点けると、シンプルな卓袱台≪ちゃぶだい≫に一枚のメモ用紙が置かれていた。誰かが書き残したようだ。危機感が足りないかもしれないが、元々このオンボロアパートに防犯性を求めていない。


「借金を他社から買い取ったから事務所まで来い、か。絶対碌な話じゃないよな。」


 相手を苛立たせないように急いで出かける。事務所の位置はメモに書かれていた。家から然程≪さほど≫離れていないビルの四階ようだ。


「『世渡≪よわたり≫ホールディングス』。ここか。失礼します。」


 灰色のペンキで塗られた鉄製の扉を開く。中は、入ってすぐに机が見え、そこに中肉中背のピッチリしたスーツにサングラスというなんともアンバランスな男が座っているだけの小さな部屋だ。まったくと言っていいほどに生活感が感じられない、本当に仕事だけといった部屋だ。


「お待ちしてました。どうぞこちらへ。」

「は、はい。」


 これといって特徴の無い声だが、どこか威圧感を感じ声が震えた。この道の人は皆こうなのだろうか。


 早速ですが。と一言入れて男が喋り始める。


「白鷺様には現在230万円の借金があります。それはご存じですね。」

「は、はい。」

「それで、なんですが。この借金、現在のペースで返済を続けていれば利息を払うだけでいっぱいいっぱいなんですよ。そこで、この借金を一括払いしてもらえないかな、と話を持ちかける訳なんです。」

「い、一括で、ですか。」

「はい。」

「ですがそれは…。払いたいのは山々なんですがそんな大金どこにも。」

「それは分かっております。ですので、お金ではなく今からお願いすることで対価を払ってもらおうと思っているのです。」

「対価…。」

「なに、法に触れるようなことをするわけではありません。ただの転生ですよ。」

「は?転生?」


 何だそのファンタジーな響きは。業界用語か何かか。そう考えると結果が目に見えていて恐ろしい。


「はい、転生です。輪廻転生のソレです。」

「あの、ちょっと意味が分からないんですけど…。」

「そう思いまして今から説明さしていただきます。『世渡ホールディングス』はまたの名を『転生ホールディングス』と言います。人間を正式な手続きで異世界に転生させるのが仕事です。」

「はあ。」

「何故人間を転生させるのか?それには、この世界と異世界との魔力が関係していまして。簡単に言うと、異世界から魔力がなくならないように魔力の有り余っている地球が魔力を譲渡するかわりに、異世界から想像力を受け取っているんですよ。」

「想像力ですか?」

「はい。ですが、その事を話すとまた時間が掛ってしまうので置いといてください。」

「はあ。」

「そして、その取引を行うのは十年に一回なのですが今日がその時なんですよ。」

「あの、それと転生に何の関係が?」

「はい。実はただ取引と言ってもその取引には媒体が必要なんです。」

「つまり、それが転生ということですか。」

「はい。そういうことです。話が早くて助かりますよ。それで、受けてもらえますか?」

「いや、あの…。」

「いえいえ、悩むのは分かっております。しかし、この話を断るのはお互いにとって拙いかと。よくよく考えてみてください。現在のあなたの状況を。」

「………分かりました。」

「そうですか。聡明なご決断ありがとうございます。」


 いろいろ考えた結果、転生したほうが効率的だと判断した。身内はもういないし、薄情だが友人よりも今まで散々悩まされてきた借金とおさらば出来るのは素直に嬉しい。

 それに僕だって日本人だ。幾らあまり接点の無い創作物語と言っても気になるワードが出て来たのは否めない。

 言葉を並べているのは自分への言い訳ではないと言い聞かす。そうしないと迷いそうだから。


「では、こちらにをよくお読みの上、サインしてください。」


 男が机の中から『転生についての契約書』と書かれた一枚の立派な紙を取り出してきた。


『転生についての契約書』


一、転生後の世界は『ペルダ』と呼ばれており、地球には存在していない様々な種族が存在しています。


二、転生後の世界には魔物や魔獣といった、地球には存在しない危険分子が存在しています。


三、転生後の世界は剣と魔法が飛び交う世界です。


四、転生については干渉することができませんので、転生後の才能は運次第です。


五、転生後の世界には多少の種族差別はありますが、魔人以外はほとんど問題ありません。


六、魔人とは魔法が人化したしたもので魔族とは異なります。


七、転生後の世界の文明は十六世紀半ばのヨーロッパ程度ですが、転生者が少なからずいたので近代レベルの文明がところどころ存在します。


八、転生後の生まれは多少希望を聞くことができます。希望がある場合は名前の横の欄に書き込んでください。


九、上記のことに理解いただけた方は下の、名前と希望の欄にご記入の上、十秒程お待ちください。


「ご理解していただけましたか。」

「まあ、はい。」

「では、他に質問等が無い場合ここにご記入ください。」

「あ、じゃあ質問を。」

「ん?そうですか。どうぞ。」

「あの、魔獣と魔物って何が違うんですか?」

「ああ、そのことですか。魔獣は、元々存在していた獣が魔力を帯びた状態で突然変異した存在。魔物は、地球には存在していない生物。といったところですかね。」

「なるほど。」

「他に質問は?」

「いえ、特には。」

「では、ここにサインを。生まれに希望があるのなら、名前を書く前にこの欄に記入してください。」


 ペンを受け取って紙に記入していく。数分掛けて書ききった契約書はなかなかに満足する物が出来た。


「長閑≪のどか≫な田舎の平民一家に転生、ですか。確かにあなたの人生を考えると落ち着いた雰囲気の環境を望みますよね。」

「まあ、そうですね。」

「では、これでいきましょう。それでは後十秒程でだんだんと意識が薄れて来ますので完全に意識を失えば、転生完了です。死体は残りません。」

「分かりました。」


 五秒ほど経つと言われた通り意識が薄れてきた。

 6、7、8、9、――――――――――――。


 夏に入り、まだ幾日も過ぎていない頃。こうして年若い一人の少年の人生が次を迎えた――――。



 

 


 


 拙い文だったかもしれませんがこれからも頑張りたいと思ってます。感想や指摘などしていただけると嬉しいです。

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