声恋~身が持たない!~
どうして、知り合ってどうして、結婚したのだろう?今更だけど不思議だ。私の旦那様は、今日も隣に居ますよ。
『おはよう、葉凪』
ゴフッ、イケボすぎる!ダメだよ、私には免疫ないんだから!そういうの一切興味なかったから、全然免疫ないんだから!
『どうしたの、葉凪。』
「ゴフッ、……やめてくださぃ…称さん」
「ふふふ、葉凪は本当弱いよね。みーみ」
と、仕事モードじゃないがいい声で耳元で囁く。
グフッ。み、身が持たない。
佐伯称さん、私の旦那様と出会ったのはコーヒーショップのカウンター。私は、バイトとしてカウンターに立っていて称さんはお客様でした。しかし、称さんが注文したのは
『キミをちょーだい?』
仕事モードで、そう言ったのだ。免疫のない私は、仕事中だというのにぶっ倒れた。
「あ、しまった」
と、遠くで聞こえました。
後から知ったというか、知らされたのだけど。称さんは、今をときめくアイドル声優らしく女性の噂なんて全然なかった人らしい。しかし、コーヒーショップアルバイト店員を注文したのだと、一気にテレビやらなんやらかんやらで話題に登り…気づいたら称さんとその事務所に保護されてました。
『つーかまえた』
「称!お前、一目惚れでその場で注文するのはダメだろ!」
と、ぱしりと称さんの頭を雑誌でたたく。その人が、事務所の社長さんだが、怒るとこそこですか?
「え~だって、止められないよね?『ねぇ?』」
ゴフッ、ムリ…。
「この子の迷惑を考えたら、もう少しあっただろ?ほら、出待ちとか?」
それ、怖いですよ。
「あ、社長。これ、サインしてくれない?」
「おま、いつ準備した?!」
パサパサ紙を左右に動かす称さん。
「抜かりはない。」
「了承は得たのか?」
とかいいながら、社長さんはスラスラとペンを動かす。
『結婚してくれるよね?…名前教えて?』
ゴフッ、あの…結婚?って聞こえましたよ?名前も知らず、結婚まで進める人はいないよね。ないない、結婚はないよ。うん。
『結婚してくれるよね?ねぇ?』
「あのっ!ほ、本気ですか?!」
「うん、本気だよ?『だよ?』」
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という攻防がありましたね、数日前。
結局、おちました。あの、声に。
『葉凪、帰ってくるまでいい子にしててね?』
「あの~大学は行ってもいいですよね?」
ボトッと、称さんは鞄を落とす。
「あれ?大学?」
「はい、大学生です…一応」
「………それは、考えていなかった。……う~ん」
「つ、通信教育あるのでそっちに変更…」
「ん、それなら安心だね『いい子』」
耳元で囁く。
ことごとくイケボ使ってくるう!も、身が持たない!
パタリと私は倒れる。
「ありゃ、弱いよね。」
お姫様だっこをすると、寝室へと運ばれる。
『クスッ、本当可愛いよ』
その一撃で私は、昇天!
私、身が持ちません!
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