22/22
22・素晴らしき世界
22・素晴らしき世界
私が目覚めたのは、お昼を過ぎてからだった。
気持ちのいい背伸びをし、カーテンの隙間から差し込む光に目を細める。
潤った目を擦り、起き上がる。
この腕を広げ、大きく息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
私を支える裸足の足が、窓辺に向かう。何も持たない手がカーテンを開け放つ。そしてそこに広がる、美しい世界。
「あぁ・・・光が満ちている」
「準備、しなくちゃ」
闇を知った私は、光がより輝いて見えるようになった。
絶望の淵に立った人は、何もかもが美しく見える。そしてそこを抜け出すと、自分に優しくなれる。心のままに生きることができる。
奪われたたくさんの大切な命。それは今でも悲しい。その悲しみはいつまでも続く。だけど・・・人の心はそれだけじゃない。数え切れない程の思い出は、悲しみだけでできているわけじゃない。
この鼓動は、色んな想いで動いている。昔も今も、これからも。この世界で、命ある限り。足跡が、続く限り。
「朱音~。って、何?その荷物」
私を支え続けた声。
「約束したでしょ?一緒に行くって」
いつも、私の手を取ってくれた。
「・・・まさか、本当?本当に本当?」
今度は・・・私が手を取ろう。
「行こう、素晴らしき世界の中へ」
了




