10・灯る光に、宿る想い
10・灯る光に、宿る想い
「もう船に乗るね、お婆ちゃん」
「ああ・・・そうだね」
私はあの後、お婆ちゃんの家に戻り、全てを話した。遠い記憶も、兄に逢えた事も。お婆ちゃんは疑うことなく私の話を信じてくれた。
それから、その話をしている時、私は泣かなかった。むしろ、微笑みながら話した。この笑顔は、兄がくれた光。絶やさずに灯し続けようと、心に誓った。
「それじゃあ、またね、お婆ちゃん」
「あ・・・朱音ちゃん」
船に乗り込もうとする私を、お婆ちゃんは大きな声で呼び止めた。
「どうしたの?大きな声出して」
「朱音ちゃん・・・もうここへは来ない方がいい。また朱音ちゃんが辛い思いをするかと思うと、私は、」
「嫌よ」
私はお婆ちゃんに割って入った。
「だって、お婆ちゃんにまた会いたいし、それに・・・お墓参りもしなきゃ」
そう・・・こんな風に私は。
「その時はまた、ご飯をご馳走してね。お風呂も貸して欲しいな」
笑って、生きていける。
「だから・・・またね、お婆ちゃん」
「・・・あぁ、楽しみにしているよ。またね、朱音ちゃん」
こうして私は、流れ着いた故郷を後にした。船に揺られながら外を見ると、夕日が海に沈もうとしていた。始まりの景色は、終わりの景色に変わった。
この旅の果てに思ったのは、後悔のない旅だったという事。いっぱい泣いたり、叫んだりしたけど、私はお婆ちゃんに逢えた。お兄ちゃんにも逢えた。それに・・・私の世界は救われた。
(色んな道があっても、最後は自分の意思で選ぶんだ。そして自分の意思を信じる。そうすれば、例え選んだ選択が間違っていたとしても、後悔までは至らない。朱音にはそうやって生きて欲しい。・・・心のままに、生きて欲しい。分かるね?)
(分かるよ・・・お爺ちゃん)
「ん・・・・はぁ」
私は思いっきり背伸びをした後、声を出して笑った。
そしてできたばかりの思い出を胸に抱いて、眠りに付いた。
(ん・・・ハープの音?)
この前夢の中で聞いた音と同じ音色が聞こえる。
(この前の続き?)
私は音のする方に向かって歩き出した。とは言え、ここは迷路のような路地。そう簡単には辿り着けない。何度も音のする場所を見上げたり、見下ろしたりと、私は夢の中を楽しそうに駆け回った。
(あ、音が近くなった)
そう感じ、先にある十字路を左に曲がると、そこにハープの奏者はいた。
その奏者とは、ボロボロの服を着た裸足の女性だった。
(ズボンに穴開いているし、裸足だ。でも奇麗な人・・・特に、髪が)
赤茶色の階段に座り、サラサラの髪を靡かせながらハープを奏で続けるその姿は、何とも言えない美。
私はウットリしながら目を閉じた。そしてそのまま、深い眠りに落ちていった。




