表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
夜葬曲  作者: スピカ
10/22

10・灯る光に、宿る想い

    10・灯る光に、宿る想い


「もう船に乗るね、お婆ちゃん」

「ああ・・・そうだね」

 私はあの後、お婆ちゃんの家に戻り、全てを話した。遠い記憶も、兄に逢えた事も。お婆ちゃんは疑うことなく私の話を信じてくれた。

 それから、その話をしている時、私は泣かなかった。むしろ、微笑みながら話した。この笑顔は、兄がくれた光。絶やさずに灯し続けようと、心に誓った。

「それじゃあ、またね、お婆ちゃん」

「あ・・・朱音ちゃん」

 船に乗り込もうとする私を、お婆ちゃんは大きな声で呼び止めた。

「どうしたの?大きな声出して」

「朱音ちゃん・・・もうここへは来ない方がいい。また朱音ちゃんが辛い思いをするかと思うと、私は、」

「嫌よ」

 私はお婆ちゃんに割って入った。

「だって、お婆ちゃんにまた会いたいし、それに・・・お墓参りもしなきゃ」


 そう・・・こんな風に私は。


「その時はまた、ご飯をご馳走してね。お風呂も貸して欲しいな」


 笑って、生きていける。


「だから・・・またね、お婆ちゃん」

「・・・あぁ、楽しみにしているよ。またね、朱音ちゃん」


 こうして私は、流れ着いた故郷を後にした。船に揺られながら外を見ると、夕日が海に沈もうとしていた。始まりの景色は、終わりの景色に変わった。

 この旅の果てに思ったのは、後悔のない旅だったという事。いっぱい泣いたり、叫んだりしたけど、私はお婆ちゃんに逢えた。お兄ちゃんにも逢えた。それに・・・私の世界は救われた。


(色んな道があっても、最後は自分の意思で選ぶんだ。そして自分の意思を信じる。そうすれば、例え選んだ選択が間違っていたとしても、後悔までは至らない。朱音にはそうやって生きて欲しい。・・・心のままに、生きて欲しい。分かるね?)


(分かるよ・・・お爺ちゃん)


「ん・・・・はぁ」

 私は思いっきり背伸びをした後、声を出して笑った。

 そしてできたばかりの思い出を胸に抱いて、眠りに付いた。



(ん・・・ハープの音?)

 この前夢の中で聞いた音と同じ音色が聞こえる。

(この前の続き?)

 私は音のする方に向かって歩き出した。とは言え、ここは迷路のような路地。そう簡単には辿り着けない。何度も音のする場所を見上げたり、見下ろしたりと、私は夢の中を楽しそうに駆け回った。


(あ、音が近くなった)

 そう感じ、先にある十字路を左に曲がると、そこにハープの奏者はいた。

 その奏者とは、ボロボロの服を着た裸足の女性だった。

(ズボンに穴開いているし、裸足だ。でも奇麗な人・・・特に、髪が)

赤茶色の階段に座り、サラサラの髪を靡かせながらハープを奏で続けるその姿は、何とも言えない美。

私はウットリしながら目を閉じた。そしてそのまま、深い眠りに落ちていった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ