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奏の告白

朝食が終わり、リビングは少し落ち着いた空気になっていた。


葵はキッチンで食器を片付けている。

紬はその横で静かに手伝っていた。


凛はカバンを肩にかける。


「私、バイトだから」


葵が振り向く。


「今日も?」


「うん」


短く答える凛。


そのまま玄関へ向かう。


ドアの前で靴を履き、振り返らないまま言った。


「……行ってくる」


玄関のドアが閉まる音がした。


少しだけ静かな空気が流れる。


そのとき。


「ねぇ」


後ろから声がした。


振り向く。


奏だった。


ソファーに座ったまま、こちらを見ている。


「ちょっと来て」


顎で廊下の方を示す。


「話したいことあるんだよね」


俺は少し眉をひそめる。


「ここじゃダメなのか」


奏はくすっと笑う。


「ダメ」


「聞かれたら面白くないでしょ」


そう言って立ち上がり、廊下を歩き出す。


俺は少し考えてから、その後をついていった。


奏の部屋。


ドアを開けた瞬間、少し意外に思った。


部屋の中は——やけに可愛い。


ベッドにはぬいぐるみがいくつか置かれていて、

机の上には小さなマスコットやキーホルダー。


カーテンも淡い色で、全体的に柔らかい雰囲気だった。


いかにも女の子の部屋、という感じだ。


奏はそんな部屋の真ん中で、ベッドに腰を下ろす。


「適当に座って」


俺は壁にもたれた。


「で?」


奏は少しこちらを見てから言った。


「昨日さ」


「凛、助けたでしょ」


俺は少しだけ肩をすくめる。


「たまたまだ」


奏は小さく笑う。


「ふーん」


少しだけ目を細める。


「覚えてる?」


俺を見る。


「最初の頃」


「夜中に君の部屋行ったの」


俺は少し眉をひそめる。


「ああ」


奏はくすっと笑った。


「びっくりした?」


「まぁな」


奏はベッドに手をつきながら言う。


「実は試してたんだよね」


「試す?」


奏は頷く。


「どんな人間か」


「この家に来たばっかりだったし」


「危ないやつじゃないか見たかった」


少し間を置く。


「まぁ」


「結果は問題なさそうだったけど」


そう言って、奏は少しだけ笑った。


それから、ふっと息をつく。


「あとさ」


少しだけ視線を逸らす。


「もう一個理由あるんだよね」


俺は黙っている。


奏は少し頭をかいた。


「実はさ」


「僕——」


少し間を置く。


それからあっさり言った。


「男なんだ」


一瞬、部屋が静かになる。


奏は少し苦笑して続けた。


「だから、万が一襲われたとしても大丈夫かなって思って」


それから少しだけ暗い表情をする。


「……ごめんね」


「男なのに、気持ち悪かったよね」


俺は少し息を吐く。


「別に」


「ただ、びっくりしただけだ」


奏が少し顔を上げる。


俺は続けた。


「それと」


「もうあんなことはしない方がいい」


奏が首をかしげる。


俺は部屋を軽く見回してから言った。


「お前、普通に綺麗なんだから」


「本当に襲われるかもしれないぞ」


奏は一瞬きょとんとした。


それから、少しだけ笑った。


「……そっか」


俺は少し肩の力を抜いた。


シェアハウスの住人の男が、俺だけじゃなかった。


それを知って、正直少しほっとしていた。


「ていうかさ」


俺は少し笑いながら言う。


「男がいてくれてよかったよ」


奏が少し目を丸くする。


「俺、この家で男一人だと思ってたんだ」


「正直、ちょっと肩身狭かったんだよ」


そう言って手を差し出す。


「これからよろしくな」


奏は差し出された手を見つめる。


それから、少しだけ笑った。


「……うん」


そう言って、俺の手を軽く握った。


「よろしく」

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