表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/10

冗談の距離

夜ご飯を食べ終え、ひと通り片付けも済ませたあと、俺は自分の部屋のベッドに倒れ込んだ。


天井を見上げながら、今日の出来事を思い出す。


「ふぅー……」


長い息が漏れる。


今日は濃すぎた。


恋愛禁止の理由。

凛の過去。

双子。


そして——


「……ぅ」


凛の風呂場をうっかり開けてしまった瞬間を思い出し、枕に顔を埋める。


「最悪だろ俺……」


湯気。

振り向いた顔。

あの一瞬の沈黙。


それに奏も、距離感がおかしい。


男、なんだよな……?

あの顔で。あの距離で。


いちいち心臓に悪い。


「普通に暮らすって言ったばっかなのに……」


ガチャ。


ノックもなく、ドアノブが回った。


「鍵、閉めないタイプ?」


ひょこっと顔を出したのは、やっぱり奏だった。


「……ノックしろよ」


「したら面白くないでしょ?」


悪びれもない。


奏は勝手に部屋に入り、俺のベッドに腰掛ける。


近い。


普通に近い。


「何の用だよ」


「様子見」


「は?」


奏は俺をじっと見る。


昼間みたいな軽い笑顔じゃない。


少しだけ、温度の低い目。


「凛の話、聞いてどう思った?」


「……強いやつだなって思ったよ」


間を置かずに答える。


奏の睫毛がわずかに揺れた。


「じゃあさ」


横目で俺を見る。


「僕のこと、どう思う?」


急だな。


「どうって……」


「僕は君のこと、好きだよ」


さらっと言う。


冗談みたいな声音。


でも目は笑っていない。


奏はそっと、俺のシャツの胸元に指を掛けた。


距離が縮まる。


甘い匂いがする。


試すような視線。


一瞬、息が詰まる。


でも——


俺はその手を掴んだ。


「やめろ」


低い声が出た。


奏の目がわずかに見開く。


「こういうのは、本気で好きになったやつにするもんだろ」


数秒、沈黙。


奏は俺を見つめたまま動かない。


やがて、ふっと力を抜く。


「……へぇ」


小さく笑う。


掴まれた手をするりと引き抜く。


「冗談、冗談。本気にしないでよ」


いつもの軽い声音に戻る。


でも、ほんの一瞬だけ、安堵みたいなものが見えた気がした。


奏は立ち上がり、ドアの前で振り返る。


「恋愛禁止はさ」


少し間を置く。


「凛のためだけじゃないから」


「……どういう意味だよ」


「さあね」


肩をすくめる。


その横顔は、いつもより少しだけ硬い、それだけ言って、部屋を出ていった。


ぱたん、と静かにドアが閉まる。


残された静寂。


俺は自分の手を見る。


「……何なんだよ、あいつ」


「マジで普通に暮らせるのか……?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ