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奏の独り言

ドアが閉まる音がした。


「よろしく」


そう言って、彼は部屋を出ていった。


部屋の中に静けさが戻る。


奏はしばらくドアを見つめていた。


それから小さく息を吐く。


「……はぁ」


ベッドにぽすっと腰を下ろす。


近くにあったぬいぐるみをなんとなく抱き上げる。


少しだけ考えるように天井を見る。


正直——


男だって知られたら、もっと引かれると思っていた。


実際、今までの人生でそういうことの方が多かったし。


「気持ち悪い」とか、

「なんでそんな格好してるの」とか。


直接言われたこともあるし、

距離を置かれたことだってある。


だから、さっきも少し怖かった。


でも——


「ただ、びっくりしただけだ」


そう言った彼の顔を思い出す。


奏は小さく笑う。


「……少し変わってるよね」


それから、もう一つの言葉が頭に浮かぶ。


『お前、普通に綺麗なんだから』


思わずぬいぐるみをぎゅっと抱きしめる。


ああいうことを言われるのは、慣れていない。


からかわれたり、変に興味を持たれたりすることはあった。


でも——


あんなふうに、普通に言われたのは初めてだった。


「本当に襲われるかもしれないぞ」


その言い方も、ただ心配しているだけだった。


奏は少しだけ頬を膨らませる。


「ほんと」


「変なやつ」


それから、さっきの言葉を思い出す。


“男がいてくれてよかった”


普通、そんな反応する?


奏はぬいぐるみを軽く抱きしめる。


「でも」


小さく呟く。


「嬉しかったな」


少しだけ頬が緩む。


そして、最後の言葉を思い出す。


「よろしく」


奏はぬいぐるみをぎゅっと抱きしめた。


そのままベッドに倒れ込み、顔を枕にうずめる。


肩が少しだけ揺れる。


部屋の中には、静かな空気だけが残っていた。

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